Laura

エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命のLauraのレビュー・感想・評価

3.5
ユダヤ教徒でありながら手違いでキリスト教の洗礼を受けてしまうという、歴史的に考えてもそう多いとは思われない特異な事故に巻き込まれた人間がどのような半生を送ったのか、興味を惹かれずにいられない。だが本作はそんな主人公エドガルドの、本来私たちの理解など到底及ばないほど引き裂かれ傷ついたに違いない内面の描写には足を取られることなく、あくまで客観的な描写に徹している。その点、やや物足りなさはあるのだが、ユダヤ教とキリスト教の儀式が交互に差し挟まれるカットバックでエドガルドの置かれている危機的な状況を表すのは上手いなと思った。

もとより、リソルジメント(国家統一運動)期のイタリアを舞台にした映画には言わずと知れたヴィスコンティの『山猫』があるが、イタリアの近代史上最も重要な時代であるにも拘らず、それ以外あまり豊富とは言えない。本作はそんなリソルジメントを宗教的な側面から描き、なおかつ誘拐という社会的な事件を題材にしている。イタリアのこの時代の在り様が映画を通じて国際的な認知を得ることは喜ばしいことだと思う。

新聞のイラストレーションが見ているうちに動きだしたり、キリストの磔刑像が人間になることを主人公が夢想したり、生命のないものに動きが与えられるシーンが頻出していた。
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