Lauraさんの映画レビュー・感想・評価

Laura

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悪は存在しない(2023年製作の映画)

3.5

どのように受け止めたらよいのか戸惑う。優等生的だからと言って、型にはまっているというのとも違うし。なんだろう。
敢えて嫌な言い方をしてしまうと、自然と人間という対立項はヨーロッパのリベラル層が好むテー
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エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命(2023年製作の映画)

3.5

ユダヤ教徒でありながら手違いでキリスト教の洗礼を受けてしまうという、歴史的に考えてもそう多いとは思われない特異な事故に巻き込まれた人間がどのような半生を送ったのか、興味を惹かれずにいられない。だが本作>>続きを読む

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)

3.5

極めて上質なサイコスリラー。知性を擬人化したかのようなジョディ・フォスターの美貌が際立っている。

蜘蛛の瞳/修羅の狼 蜘蛛の瞳(1998年製作の映画)

3.5

ヤクザ映画に出てくるヤクザってさもそれらしく凄んでみせるけど、その実、何で日銭を稼いでいるのかよく分からなかったりするので、そういうナンセンスを逆手に取ったパロディという感じで面白かった。哀川翔に何だ>>続きを読む

ミッドサマー(2019年製作の映画)

4.0

家族の自死、恋人の裏切り。一人で正気を保つにはあまりに辛すぎる現実。人間がカルトに取り込まれる条件はこうして揃う、というシミュレーションを見せられているようだった。粗野でインセンシティブなアメリカ人と>>続きを読む

妻二人(1967年製作の映画)

3.5

松本清張サスペンスのような味わい。人間の愛に「同胞愛」と「性愛」の2種類があるとすれば、どちらかを取るんじゃなくて、それを調停していくのが文明的な結婚生活なわけだけど、この映画の若尾文子と岡田茉莉子は>>続きを読む

箪笥<たんす>(2003年製作の映画)

3.5

この映画が劇場公開されたころ伊藤潤二にハマっていたので、ポスターを見かけて好みだ!と思ったのを覚えている。20年越しに観ることができた。郊外の洋館とか黒髪の少女とかシスターフッドとか血とか、たしかに当>>続きを読む

しとやかな獣(1962年製作の映画)

3.5

団地ドラマ×ピカレスク。アナクロと承知でこの取り合わせには『パラサイト 半地下の家族』を思い出さずにはいられない。ここで主人公家族を一つにしているのは「もう二度と終戦直後の貧乏暮らしには戻りたくない」>>続きを読む

ドレミファ娘の血は騒ぐ(1985年製作の映画)

3.5

黒沢清の映画を遡って観ているので、自主映画時代にも後の黒沢清を思わせる作家性はすでに刻印されているのかどうか、という観点から観てしまった。主人公を執拗に追う長回しとか差し色の赤とかがそれに当たるのだろ>>続きを読む

蛇の道(1998年製作の映画)

3.5

90年代の空気を濃密に纏った怪作。悪趣味と言えばそれまでなのだが、いつもながら画作りの妙な几帳面さが魅力的。犯人が拘束されている廃倉庫から、そのままぬるーっと長回しで主人公たちが待機する隣の小部屋に移>>続きを読む

銀座化粧(1951年製作の映画)

3.5

成瀬巳喜男×新東宝。掴もうとするとふっと消えてしまう、都会的な人間関係。いくつかの人間関係が銀座という街を舞台にゆるく錯綜して話が展開していく、この語り口はのち川島雄三によって日活映画で再現されるだろ>>続きを読む

哭声 コクソン(2016年製作の映画)

3.5

「信じる」ことの危険さを描いたサスペンス。韓国版エクソシストかと思いきやゾンビ映画に転がっていく、このとっ散らかり具合はエンタメとして楽しい。ただ中核をなすはずのキリスト教の部分はやや取ってつけたよう>>続きを読む

風船(1956年製作の映画)

3.5

主人公の名前が村上春樹。それはともかく、全員が主役のような存在感。もちろんクレジットでは森雅之・三橋達也がトップに来るのだが、誰が主役というよりは全員が互いのキャラを引き立て合い、一つのドラマを回して>>続きを読む

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)

3.5

ポン・ジュノ監督の名前を初めて聞いたのは、10年ほど前にあるシナリオ座学の講座に参加した時のことだった。講師が『殺人の追憶』を挙げて良くできたシナリオのお手本だと激賞していたのだ。それから5年ほど経っ>>続きを読む

インセプション(2010年製作の映画)

3.5

20世紀までの研究である程度明らかになってきた明晰夢とか臨死体験の理屈が、おそらくかなり忠実に映像化されているのだと思う。ただそれがストーリー化されると複雑なルールの世界になってしまい、物理学や量子力>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

3.5

映像が音を追いかけていた。事故のシーンも音だけで表されるし、音が常に優位にある映画。都会のなかで文字通り身を削って働く人々と、ラジオで伝えられる遠く離れた地の戦闘状況と。物語として何か具体的な打開策が>>続きを読む

パーフェクト・ケア(2020年製作の映画)

3.0

公開当時「ブラックコメディ」という触れ込みだったと記憶するが、そんなに笑えるシーンはない。さしずめ社会派エンターテイメントと言ったところか。老人の後見人制度をギリギリ適法内で悪用して儲けている弁護士が>>続きを読む

無防備都市(1945年製作の映画)

4.0

ネオレアリズモといえば一番に本作を挙げたい。年代的にも第二次世界大戦におけるイタリア解放の歩みと一致していて、狙って撮られるものではない、時代に選ばれた作品という感じがする。

ドラゴン・タトゥーの女(2011年製作の映画)

3.5

オープニング映像とダニエル・クレイグ主役のキャスティングが007感。ルーニー・マーラ演じるリスベットがヒロインだが、パンチの効いた見た目に対して内面や過去の掘り下げが乏しいと感じてしまい、今ひとつ感情>>続きを読む

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)

5.0

再見。ミズーリ出身の無学な男の子種を欲するハーバード大卒ニューヨーカーの才媛というテーマを、アルテミジア・ジェンティレスキが描く女傑ユディトの系譜に画的に接続したフィンチャーの凄さ。男女のパートナーシ>>続きを読む

ボローニャの夕暮れ(2008年製作の映画)

4.0

10月25日、イタリア文化会館にて、アヴァーティ監督の最新作『ダンテ』公開記念のイベントで鑑賞。監督は85歳という高齢ながら、上映前のトークはなかなか含蓄あるものだった。映画の時代設定は第二次世界大戦>>続きを読む

PATHAAN/パターン(2023年製作の映画)

3.0

インド人の愛国心やナショナリズムについて考えさせる映画。クライマックスにかけての展開のハラハラ感は申し分ないのだけど、先行するハリウッド製大型アクション映画の既視感は否めない。あえて時系列を錯綜させた>>続きを読む

ヒッチコックの映画術(2022年製作の映画)

2.5

ヒッチコックは1980年に亡くなっているのだが、今の世界を知っている本人のナレーション(もちろん設定)で進んでいく。まるでヒッチコックが蘇ったか、あるいはカズンズ監督と一体化しているような不思議な語り>>続きを読む

ランガスタラム(2018年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

これがインド映画なんだ、と本作とRRRの2本しか観てない=サンプル数2の状態で思う。最初と最後がまったく別の映画になってしまっている。ハリウッド的な批評体系やシナリオの定石で行けば破綻ということになる>>続きを読む

遺灰は語る(2022年製作の映画)

3.5

イタリア文化に関する高度なリテラシーを要する作品。たとえばある程度イタリア語を解し、(映画でも文学でもないけど)イタリアのことを研究している私のような人間でもピランデッロの『釘』は読んだことがないし、>>続きを読む

RRR(2022年製作の映画)

4.5

火や水を使ったスペクタクルはサイレント時代のハリウッドにさかのぼるので、そういう意味で古典的と言ってよい作品。そこにインドの叙事詩の世界観が組み合わされた文字通りの爆発的なエンターテイメント。「どんな>>続きを読む

マグダラのマリア(2018年製作の映画)

3.0

マグダラのマリアは一部の福音書ではイエスの復活の最初の目撃者とされているのだが、女性であったゆえにその地位はなかなか認められず、591年グレゴリウス教皇によって娼婦だったという「設定」まで与えられるに>>続きを読む

殺し屋ネルソン(1957年製作の映画)

3.5

ムダがないとかスピーディというレベルを通り越している。効率主義。導入?余韻?何それおいしいの感。ここまで来ると映画の定義に立ち戻って考えたくなる。でも男と女がおり、機関銃があり、これは確かにカーティス>>続きを読む

還って来た男(1944年製作の映画)

3.5

川島雄三監督、織田作之助脚本の戦中ドラマ。南方の戦線から帰還した軍医(佐野周二)を主役に、田中絹代演じる小学校の先生、レコード屋の父子と、川島得意の三つ巴の群像劇形式はこの頃からすでに闊達。「人間は身>>続きを読む

勝利者(1957年製作の映画)

3.0

井上梅次監督のボクシング映画。三橋達也が主人公だけど見せ場は裕次郎と北原三枝コンビにある。三橋は33-34歳にして線の細い二枚目路線から中年の貫禄路線にシフトした感じ。今の俳優は歳とっても見た目若い人>>続きを読む

パンドラの箱(1929年製作の映画)

3.5

ルイーズ・ブルックスの瞳に入りこむ十字型のハイライトはどういう細工なのだろう。

シェラ・デ・コブレの幽霊(1964年製作の映画)

3.5

Jホラーの先駆け『女優霊』に影響を与えた作品であると同時に、ヒッチコック『レベッカ』のチャーミングなパロディでもある(冒頭の門のシークエンスと不気味な洋館の舞台立て、そしてそこに現れるジュディス・アン>>続きを読む

貸間あり(1959年製作の映画)

3.5

個人的に川島雄三はこういう下町艶笑系よりも都会型群像劇のほうが好みなのだが、どちらが真髄というのではなく、人間ある限り都会にも地方の下町にも生命のエネルギーと悲哀は等しく流れている、という信念こそが彼>>続きを読む

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