TAK44マグナム

カーターのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

カーター(2022年製作の映画)
3.5
呆れるほどあり得ない!


戦闘美女の傑作「悪女/AKUJO」でも明らかにドラマ部分よりアクション描写を優先させていたチョン・ジョンギル監督が更に輪をかけて破茶滅茶なスーパーヴァイオレンスを完成させた!


朝鮮半島で(またもや)ゾンビパンデミックが発生!
何故か記憶を失っている男は事の経緯も分からぬまま、感染者治療の決め手となる女の子を守る任務を負わされていた。
いったい自分は何者なのか?
そんな疑問を持つ暇もないほど迫りくる「敵」の襲撃!
登場人物どころか観る者さえも理解が追いつけないハイスピードで事態は進行してゆくのであった・・・


この映画はとんでもない。
とんでもなくバカ!
2時間以上、擬似ワンカットで8割がたは戦っている。しかもドローン撮影を駆使した縦横無尽なカメラワークがグルングルン動きすぎて主人公や女の子がどうなっているのかさっぱり分からなくなる。
何なら、女の子は何回か死んでいてもおかしくない。主人公は超人でも女の子は普通の子供ですからね。
あんなん付き合っていたら命がいくつあっても足りませんよ(汗)
というか、数百人は敵を殺しまくっている主人公自身、どうみても20回ぐらいは死んでいるが骨の一本も折れない。かすり傷程度。
つまり本作は真っ向からリアルを捨てているんですな!
天下のケイブンシャなら本作だけで荒唐無稽大百科を編纂できそう。
たぶん監督の観たい、撮りたいものだけを強引に繋ぎ合わせたのでしょう。
強引だが予算も無限ではないので、その強引さを成立させる為のVFXの粗さも目立ちます。
いきなりCGっぽくなるので正直冷める箇所もありました。
そしていくらなんでもこのバカバカしいテンションで2時間は長い。
笑える内容ではなく、いたって大真面目。
シリアスなのに息抜きがないのは非常に疲れます(冒頭、素っ裸でヤクザ群団を無双する主人公には『苦笑い』するほかなかったですが)。
正直、「もういいよ!」と、有り得ないアクションが果てしなく続くクライマックスでは食傷気味になってしまいました。
ゾンビが川を流れてくる場面などは本当にアホで好きですが、やはりもう少し緩急をつけて、しっかりしたドラマも見せてほしかったですね。
何かもう、主人公の家族の話とかどうでもよくなってしまいました。
奥さん役の女優さんは美人さんでしたけれど・・


観れば分かりますが、本作はゲームをプレイせずに観ているような感覚をおぼえます。
もし本作がゲームの実写化だったのだとしたら、そのまんまをただ生身の俳優を使って再現しただけの代物でしかなかったのではないでしょうか。
アクションゲームは「プレイできる映画」を目指して実現させてきましたが「プレイを見せられるだけの映画」はあまり歓迎できるものではないと思います。
但し、全編くまなく充満したこの「とんでもなさ」が抗えない魅力を放っているのも事実・・・
こういう映画を真面目に撮れるのも凄い才能であることは間違いありません。
でも次回はもう少しテンション下げ気味でお願いしたい(汗)

それにしても驚いたのは、CIA要員にやたら綺麗な人がいるもんだと思ったらカミーラ・ベルじゃないですか!
最近見かけなかったけれど映画に出ていたんだ〜!と、ビックリ。
個人的に嬉しいサプライズでした!
しかし、キャラクターとしては使い捨てされていて残念。ゲスト出演だったのかな?


NETFLIXにて