Bitdemonz

さかなのこのBitdemonzのレビュー・感想・評価

さかなのこ(2022年製作の映画)
3.7
さかなクン“さん”本人の自伝をベースに造られたという作品ではあるが、辿る未来の可能性としての“サカナおじさん”との接触も含めて一部ファンタジー的にも描かれることで嘘のような(何処までが事実かは知らないので)脚色を自然な流れで展開。

どう考えても“こんなに都合良い環境”に恵まれてるとは思えないが、さかなクンの史実を正確に伝えることではない辺りが冒頭の「おとことか、おんなとか関係ない」の一言に集約されており、好きなものを純粋に追い求める熱意が未来を切り開いていく「人間」を描いている物語はとても潔く清々しい。

ただ正直個人的な感想としては、どうしても現実的な出来事との相違を勘ぐってしまう事がノイズになり、素直に観る事が出来ない。時折描かれる「現実的な描写」の妙な生々しさが(床屋さんのくだりなど)、ファンタジーに食い込んでくる事で(と言いつつ味わい深い描写だとは思う)、どうにも周囲の人々たちとの「(都合の悪い部分を排除したような)やさしい世界」に薄ら寒いものを感じてしまったのも事実。
コレが漫画かアニメだったとしたらまた印象も違うのかもしれない。

しかしながら、主演の のんが演じる圧倒的な主役力がそのファンタジーに説得力を持たせ現実を超越していく様子はとても痛快で、この作品をエンターテインメントとして成立させる牽引力にもなっていたと感じ、ただただそこには驚異しかない。


とまぁ、グダグダと列ねたものの、なんだかんだ作品として楽しく仕上がっているというのが一番の感想で、“気軽に"もう一度見たくなるような程よいバランス、結構そういう作品は貴重だと思います。
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