T太郎

逆転のトライアングルのT太郎のレビュー・感想・評価

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)
3.9
1055
スウェーデン発の少々変わったコメディだ。

この監督の作品は何本か観た事がある。
そう言えば、どの作品も少々変わっていた。
そして、面白かった。
果たして、この作品はどうだろう。
お手並み拝見といこうか。
どれどれ・・・

うん。
とても、面白かった。
やや長尺ながら、退屈する事なく鑑賞できたのだ。

物語はカールとヤヤという若いカップルを中心に展開する。
二人はモデルなのだが、カールはあまり売れていない。
ヤヤは売れっ子のようだ。

PART1は二人の紹介がてら、面白いやり取りが描かれている。

PART2は豪華クルーズ船での出来事。
船長役はなんとウディ・ハレルソンだ。
ヤヤのコネで二人は乗船しているようだ。
お金持ちの乗客と船のクルーたちとの対比が巧みに描写されている。

PART3の舞台はどこかの孤島だ。
ある事情でクルーズ船が沈没してしまったのである。
この島に流れ着いたのは8名の男女だ。
彼らが繰り広げるサバイバル模様が、この物語のメインメニューである。

コメディなので、あまり深刻で重い雰囲気はない。
あっけらかんとした感じだ。
そこはご安心して観ていただけるだろう。

この8人の中で最もサバイバル能力に長けていたのは、なんとトイレ掃除係のアビゲイルだった。
小柄な中年女性である。
最もというか、唯一だ。
他の7人は全然プーなのだ。
彼女は食料調達、火おこしを一人でやってのける。

そして、下克上だ。
彼女は手持ちの食料などを武器にグループのリーダーへと登りつめるのである。

そのグループの内訳は、アビゲイル、5人の乗客、アビゲイルの上司、身元不明の男だ。
不幸中の幸いとでも言おうか、カールとヤヤもこの中にいた。
ここからアビゲイルの独裁生活が始まるのである。

この島では、立場とかお金とか名声とかは一切価値がない。
唯一頼りになるのは生存自活の能力のみなのだ。
そんな中、アビゲイルが一体どのような挙に出るのか。
気になるところである。

とは言え、先ほど述べたとおり全く重くないので、全然お気楽に楽しめる。
アビゲイルの横暴もかわいいものである。

だが、独裁者は一旦握った権力を決して手放そうとはしないものだ。

本邦の周辺にも今現在、その典型のような権勢欲に取り憑かれた人間が何人かいるではないか。
歴史の汚点としか言いようがない、唾棄すべき輩どもが・・・

おっと、この作品は重くないのに、私の主張の方がやけに重くなってしまったようだ。

時を戻そう。

     以下ネタバレ注意

この作品は、一旦権力の味を知ってしまった小市民が、最後にどのような選択をするのか。
そういう物語なのである。

下克上による皮肉で残酷な人間模様を期待していたのだが、そこは非常にあっさりしていた。
お金持たちは、実に簡単にアビゲイルの軍門に下るのである。

で、一体何が主題なのかと観ていたら、最後のあの場面だったのだ。

これはリドルストーリーだ。
結末は描かれない。
観客の想像力にお任せ、というやつなのだ。
果たして、あなたはどちらを選択しますか?
という訳である。

この手法に不満を抱く方もおられるだろう。
だが、そこは我慢していただきたい。
リドルストーリーとはそういうもんなのだ。

PART1について言及しておきたい。
ここでのカールとヤヤの言葉の応酬が実に面白いのだ。

レストランで食事をした後のお支払いを巡るやり取りだ。
おごられて当然という姿勢のヤヤと、それが我慢ならないカール。
もの凄く細かくもセコいやり取りが繰り広げられるのだ。

だが、私はカールの味方だ。
ちょっとしつこくてネチっこいが、彼の言い分はよく分かる。

そう、お金の問題ではないのだ。
気持ちや態度の問題なのだ。

フェミニズム云々を持ち出す気はさらさらないが、対等な人間として、あれはいかがなものかと思った次第である。

色々言いたいが、女性を敵に回してしまいそうなので、今日はここらでやめておく。
私は全面的に女性の味方なのだ。
女性は大好きなのである。
王将の天津飯の次に大好きなのだ。
T太郎

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