T太郎

THE GUILTY/ギルティのT太郎のレビュー・感想・評価

THE GUILTY/ギルティ(2018年製作の映画)
4.0
1053
デンマーク映画だ。
非常に緊迫感のあるサスペンス・ミステリーであり、しっかりとした人間ドラマである。
じっくり見入ってしまった。
かなり面白かったのだ。

主人公はアスガーという警察官。
元刑事と思われる。
なにやら事情があるらしく、緊急ダイヤルとやらのオペレーターをしている。

この緊急ダイヤルに市民から緊急通報が入る。
110番や119番に相当する部署だ。
その通報を各地区の緊急司令室に連絡する事が彼の仕事だ。

物語はこの緊急ダイヤルの一室だけで進行する。
更に言うと、アスガーが座っているデスクでのみだ。
一体どういう事なのか。

説明しよう。

アスガーはある不審な通報を受ける。
イーベンという女性からだ。
彼女は何者かに車で拉致されたらしい。
犯人の目を盗んで通報してきたのだ。

主に、この拉致事件の顛末が語られていくのだが、現場の様子は一切映し出されない。
この事件にのめり込んでいくアスガーと事件関係者らとの電話のやり取りだけで物語が進んでいくのである。

要は、アスガーが電話をしている場面が延々と続く訳だ。

大丈夫なのか。
これで面白い映画になっているのか。
退屈な事山の如し、なんて事になっていないのか。

ご安心あれ。
これが実に面白かったのだ。
物語も2転3転の展開があり、退屈とは無縁なのである。
退屈とは無縁な事山の如しなのだ。

最初はアスガーの対応もやや事務的だ。
事件が事件だけに緊張感は走るが、それでも冷静さを保ちつつ対処する。
与えられた職務の範疇でだ。

だが、イーベンの娘、6歳のマチルデと話した辺りから様相が変わってくる。
彼は職務を逸脱して、この事件に関わっていくのだ。

イーベンもそうだが、このマチルデもご出演は声だけである。
その声の演技が素晴らしく、助けてあげたくなるような雰囲気が溢れ出ているのだ。

アスガーはたちまちその声にほだされ、思わずこう言う。
「約束する。絶対ママを助ける」

安易にそんな約束をしていいのか?
犯人は非常に危険な奴だぞ。
物事に絶対などないのだぞ。
王様の言う事以外!

とは言いながら、かく言う私も思いっきりほだされてしまった。
それぐらい破壊力のある、健気な電話だったのだ。
お菓子でも買ってあげようかと思った次第である。

90分にも満たない上映時間ながら、様々な要素があり、アスガーの背景にも重要なドラマがある。
見応えバッチリなのだ。

更に、この拉致事件の全体像が一体どうなっているのか。
ここが最大のポイントでもあるのだ。

ああ、ネタバレしたい。
微に入り細に入りぶちまけたい。
完膚なきまでに書き散らかしたい。

だが、今回は自重しよう。
私にも大人の分別と自制心があるのだ。

さて、そんな素敵な大人の私は小腹が減った。
買い置きしているお菓子でも食べるとしよう。
マチルデは自分で働いて買っていただきたい。
とにかく、私は小腹がすいたのだ。
(マチルデに謝れ)
T太郎

T太郎