大前提として、姉アリスと弟ルイは憎しみ合っている。
ルイは自分の子供の葬式にも姉アリスを入れずに追い返す。
アリスは両親を見舞いに来た病院で、弟がいるのを見かけただけで、意識を失って倒れる。
本屋で姉の息子に怒鳴りつける。
レストランで椅子を投げつける。
なぜこんなに憎しみ合い嫌うのか?
こんなに人前で感情的になる人を見たことがない。周りの人から見れば、かなりサイコだ。
赤の他人ではない姉弟だからこそなのか?
極端な憎しみは溺愛の裏返しか?
監督は「アリスを解放するためにこの映画を作った」と語る。
劇中、旧約聖書の「肉親の裸を暴いてはならない」という言葉が引用されたり、近親相姦を想起させるようなシーンもあるが、
なんとなくわかっても、その理由ははっきりとは明らかにされない。
どうやら、この姉と弟の「憎しみ」は、具体的なドラマや理由があるのではなく、作劇上での前提といったもののようだ。
憎しみからの解放、そして旅立ち。
理由をはっきりさせないからこそ、誰もが共感できる家族の話になるのかもしれない。(個人的には全く共感はできなかったが)
突然、空飛んだり、ジブリを思わせるようなシーンもあり、監督の遊び心も窺えた。