Bitdemonz

クライムズ・オブ・ザ・フューチャーのBitdemonzのレビュー・感想・評価

4.2
未だ見ぬ世界を描くサイエンス・フィクションと呼ばれるジャンルにおいても極めて異質な存在感を際立たせる設定、シナリオやオブジェクトなどのディテールの数々は、多くの作品群がテクノロジーの発展による“外側から”の人間の進化や世界観を中心に描くことに対し、様々な“肉体の有り様”を造り出してきたデビッド・クローネンバーグ監督ならではの“内側から”変革していく未来像を提示する非常に興味深いアプローチの作品として見事に(妙な説得力と共に)整合されていると思えた…

…というか、有無を言わさず「そういうものだ」というフィールドに放り込まれるのだから仕方がない。

進化した人間は“痛み”から解き放たれ、傷つける行為で快楽を得るのが一般的な世界なのであれば、人肉で出来たような謎マシーンが当たり前のように使われてる設定も可能性としてはある(ゼロではない)かもしれないし、体内に未知の臓器が造られてしまう病を持った人(主人公)が摘出する様をアートとして表現して生計立てたりするんだろうし、そういう人を“進化した人間”として信仰する人達が居たり、そんな世界だもんだから有毒プラスチック喰えるように肉体が適応出来るように人間が進化したらコスパ良くね?みんなやろうぜ!と思う人達が出てきたり、そうすると価値観やビジネスがいきなり大きく変わるのマズくね?と管理しようとする大きなチカラが働くのも「そういう」世界観なのだから受け入れてしまう他ないのだ。実にオモシロイ。


その「そういう」世界観にしっかりした説明もなくいきなりブン投げられるので、適応出来なくて当然だと思います。自分も軽い眩暈と眠気が催す中で、混乱しながらもフワフワと独特の世界観に酔ってました。

観終わった後の「うわぁーヘンなモノ観ちゃったなァ」という印象、これだけでも充分に満足です。なかなかこんな変わったモノ観られませんので(笑)
なので一般的にオススメ出来るようなものではないと思います。

あとはパンフレットがまた良く出来てまして、丁寧な観音開きの薄紙を剥くと姿を現す豪華な装丁の冊子は、さながら解剖して臓器を取り出すが如く作品イメージを見事に表現したコンセプトで、尚且つ解説やアートワークなど内容もかなり充実した逸品でした。
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