原作の大ファンで実写(特に邦画での)は身構えるタイプのオタクですが、いや、本当によくやってくれました。
原作のストーリーを忠実になぞりながら、青春を不可逆なものとして描く手腕や"愛の話"として深みを持たせる脚本がとにかくすばらしい。
映画観る部の巻き戻しできないVHS、愛について語る部員たち、聡実の母が父に鮭の皮をあげるスローモーションのシーン、これらのカットにとても上質な"観客に意図を考えさせる映画としての良さ"を感じた。正直ここまで良いカットがあると思っていなかったので驚いた。野木亜紀子氏が手がけた脚本のセンスにほかならないと思う。
些細なカットに意図を含ませるタイミング、過剰に笑いを誘わない温度感、盛り上がるときはしっかり盛り上がる起伏のつけ方。そのどれもが心地よく、ノーストレスで観られる実写は本当に稀有。制作陣とキャストの熱意を感じた。
絶妙かつ丁寧に練られた脚本の上を、岡聡実と成田狂児が生き生きと動く。私の好きなふたりがそこにいた。観て良かった。原作オタクからもすすめられます。ぜひ。