つるつるの壺

To Leslie トゥ・レスリーのつるつるの壺のネタバレレビュー・内容・結末

To Leslie トゥ・レスリー(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

本当に助けを必要としている人物は助けたくなるような人物ではない言われるが、今作のレスリーもそういう人物。アルコール依存症で口汚く、盗み癖もある。そういった人物が路頭に迷った時、辛抱強くケアをしてくれる人は限りなく少ない。前半はレスリーが新しい依存先を求めて彷徨い、他者の人生にズケズケと入り込んではことごとく拒否されていく。それは彼女の今までの人生の答え合わせでもある。

ダメな自分をそのまま受け入れてくれるような余裕は他者にはない。しかし人生を立て直すにしても、地に足の着いた居場所がなければスタートラインにも立てない。そこで現れるのがスウィーニーである。面倒だが手を差し伸べた手前、無下にも出来ないなという後悔交じりなのがいい。この人物が辛抱強くケアをし、かつ未来まで切り開いてくれるというのはなかなかのご都合主義。あと、アルコール依存症には適切な治療が必要なので、根性で克服するのはナンセンス。

劇中で人生はおとぎ話ではないというセリフが出てくるが、後半の展開はまさにそれであり、最底辺の生活から10か月かそこらで店を開くというのは流石に無理があるように思う。あんな人通りが少なくメニューも限られた店だとすぐ潰れそう。

高額の宝くじ当選というが、それは億単位のものではなく、今のレートで約3000万円くらいのものであり、大きな夢を抱けるような金額ではないのがまた侘しい。中古の家を買うので精一杯だろう。

『ザ・ワイヤー』でバブルスを演じたアンドレ・ロヨが出演しているのが嬉しい。