七色星団

ゴジラ-1.0の七色星団のレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.5
ゴジラの造形が魅力的で、徹底的な破壊活動に「凄っ…」って思えたらゴジラ映画としては成功だと思ってるので、本作は良かったんじゃないですかね。

先ずは流石だなぁと感じたのは街並みや風景、街を走る各種交通車両、海での艦艇など、観てる者が目の前にある世界をリアルだと認識するに足るだけの映像的説得力。ちょっと綺麗過ぎる感じはあるけどね。

まぁとにかくゴジラが凄い。
ゴジラ大暴れシーンだけなら『シン・ゴジラ』を凌駕する迫力と絶望感があったんじゃなかろーか。
巨大化する一方の昨今のゴジラ映画だけど、本作は昔懐かしい"良い塩梅サイズ"なゴジラと、混乱して逃げ惑う市井の人々との対比の構図から、物理的にも感覚的にもゴジラが近く、大きく感じたのは新鮮だった。
兎に角ゴジラが暴れ回るシーンだけで飯が何杯もイケる。

ただ本作の褒めポイントはビジュアル面が主で、ここからはネガティブ意見。

やはり山崎貴作品のドラマ部分の凡庸さは相変わらず。

ワダツミ作戦だっけ?…野田も自分で言ってたけど、未知の生物を倒す拠り所としては余りにパンチ弱い(笑)それより外殻への攻撃は効かず、口腔内での爆発が効果が大きかったことは最初の交戦で野田は見たんだから、内部破壊を更に発展させた作戦の立案に注力すべきだったんじゃない?
浅瀬と深海を行ったり来たりさせる方こそ次案でしょ。

駆逐艦2隻で引き揚げられないゴジラをボート?漁船?20〜30艇が加わったからって助けになってたかなぁ?

それと『ジョーズ』みのある演出も、というかゴジラをサメに置き換えたらまんまじゃん!みたいなのが多いの気になったけど。
海上でのゴジラとの初交戦なんてジョーズのサントラ♫一番銛! が聴こえてきそうだった。

などと、こういう言い掛かりかよ!みたいなことすら頭に浮かぶのは映画に集中出来てない証拠で、その原因は敷島という人物像を描く神木隆之介にあると思ってる。
「死ぬはずが死ねず、助けたくても助けられず、ある日突然目の前で大事な人を失う」
という、当時の日本人の多くが経験した思いを内包した人物像は神木隆之介には荷が重かった。
役者としての神木君は結構好きなんだけど、演者としての神木君の魅力的な部分と、敷島という恐怖と絶望、そして自分自身に失望し閉じ篭もっている人物像ってのが食い合わせが良くないのかも。つーか山崎貴作品って役者が下手に見えるんだけど、そのせい?
情けなくも嘘をついて特攻から引き返してきた挙句に、味方を見殺しにして生き残ってしまった自分に失望しまくりの復員兵ですよ。なのにどのシーンの表情も言葉も態度も軽い、軽過ぎるのだ。
更にやたらと悪目立ちするのは、ただ叫ぶ。怖くて叫ぶ。絶望して叫ぶ。何がなんでも叫んでるイメージだったんだけど何でこうなっちゃうんだろ?

改めて思うけど日本の映像作品の作り手達は日本の観客は、胸ぐら掴んで叫んで、大声で泣き喚くなどの大仰な演技をしないと登場人物の心中を推し量れないと本気で思ってるんじゃなかろーか?

ここまではどちらかと言うと悪い部分の方だけ暑苦しい感想を並べ立てたけど、それでも最初に書いたようにゴジラが凄い!この一点だけは他のゴジラ作品の追随を許さないと思ってる訳で、そこで加点してます。

もう一つ良い所思い出した。
野田の作戦決行前夜の皆を前にした語りに、愚行を繰り返した旧日本軍への最大級の皮肉が効いてましたね。
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