七色星団

水は海に向かって流れるの七色星団のレビュー・感想・評価

水は海に向かって流れる(2023年製作の映画)
3.6
原作漫画のファンであり、作者・田島列島作品のファンでもあり、広瀬すずも良い女優さんだと思ってるので本作をニュートラルに評価するのは難しいのだけど、先ずはシンプルに面白かった、という感想。

高校一年生の主人公・直達がひょんな事から転がり込んだシェアハウス。そこに同居人として住んでいた26歳の女性・榊さんが、10年前に直達の父がW不倫して駆け落ちした相手の娘だったという導入部。直達と榊さんの関係性をシェアハウス住人達を上手く立ち回らせた序盤の演出で直達に、そして観客にもさり気なく説明してるの上手いなぁと。

適正に、適切に怒る
これが出来なかったために人生拗らせてしまった榊さんの今後はいかに?
そして、複雑な絡み不可避となった榊さんとどう向き合ってゆくのか?直達よ!
を本作は描いていく。

序盤から中盤までは田島列島みのあるコミカル演出や台詞回しを抑え、直達と榊さんのギクシャク感を出した演出を重視。これは多分、いきなり田島列島み全開だと、「これはコメディ?」と観客が戸惑わないように配慮されたのかなぁと思ったり。
中盤以降、二人の関係が徐々に変わり始める頃から台詞回しも変わり、田島列島たるコミカルな部分も大袈裟にならない塩梅で描かれたのも良かった。

ただ、やっぱり原作ありきの実写化作品の難しさ。直達と榊さんの関係をじっくり描いていた漫画原作の味わいが本作には感じられなかったのも正直なところ。
更にSNSには"ラストが物足りない"とか"ラストにモヤる"という意見も多く、それはよく分かる。乱暴な言い方するとブツ切りじゃないかと。
原作既読ファンはあの気持ちの良い、爽やかなラストを知ってるからこそ、映画はどう描くのかと興味は尽きなかったはずだが、映画のラストにはしごを外されたと感じたファンもいたはずだ。

ただ、二時間の枠で榊さんの解けていく心を描くなら原作通りのラストは急ぎ過ぎで、都合良すぎるんじゃない?なんて違和感は大きくなったのではないかと。だから、二人の今後の関係に含みをもたらす所に着地という脚色は英断だったのではと感じてる。

最後に
楓役、當真あみの輝きが眩しすぎて目潰しにあったのは何を隠そう、この私。
このハート泥棒!笑
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