七色星団

君たちはどう生きるかの七色星団のレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.6
冒頭、火事により赤く染まった町、そこら中を飛び交う火の粉に騒然とする人、人、人。そんな中で火事の中心である病院に務める母の安否を思い、慌てふためきドタバタ家を走り回り町中を急ぐ眞人の顔が火事の熱によるものか、若しくは眞人の心情を表したものとも言える”歪み”の作画の凄まじさにギューッと心を掴まれた。
さらに、このシークエンスの走る飛ぶなど含めて”ジブリ走り”などと評される動的シーンの躍動感は流石の出来で、いつもの五割増しの凄みがあり、鈴木敏夫曰く「宮崎駿には好きにやってもらった」という、これがリミッターを外した宮崎駿か!と唸ってしまった。でも、本作で瞬間最大風速を記録したのはここ。後は静的シーンでの効果的な音楽と環境音の使い方は良かったなぁ。でも内容的には面白い!となりそうでならないまま、その後は僕の心電図は時折ピクッと針が振れる程度でそのままエンド―
といった具合。

前作の『風立ちぬ』で大人の物語を描いた宮崎駿なので、今作はもっとトンガッた作品かと思っていた部分もあったけど、蓋を開けてみたらこれまで何度も描いてきた少年少女を中心とした物語で、初見では代り映えしないなぁという印象。ただ二度目は観ないと思うけど、多分…。

どうも僕のアンテナとその感度は宮崎作品との相性が良くないからか、作品が狙った意図にイマイチ共感出来ないことが多い。
それはもう『もののけ姫』くらいから始まってるので、それならいい加減観るの辞めれば良いやんと思うんだけど、やっぱり子供の頃に様々な刺激を受けて来た宮崎作品という信頼のブランドに何処かで期待していて、そして「おぉっ!」と驚かされることが、たま〜にあるもんだから観に来ちゃうんだよねぇ。

そして声優。
何故ジブリは素人臭い演技しか出来ない俳優を使うのか問題。
感情が入ってない”棒”の演技が聞いてられないって人が必ず一作品につき一人や二人いて、それがノイズになって集中出来ないことも多い。
そして本作も例に漏れず―です。
ディズニーやピクサーを筆頭に、外国アニメの吹き替えの多くは上手くやってるのに、何故ジブリはこんな愚を犯すのか不思議でならないんだよなぁ。

宮崎駿の自伝的作品という話も事前に聞いていたし、セルフオマージュという訳ではないんだろうけど、本編中にもこれまでの宮崎作品で観たあんなシーン、こんなシーンがてんこ盛りで、どこかで読んだ”宮崎駿の走馬灯”という表現がピッタリだなと感じた。
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