うりぼう

君たちはどう生きるかのうりぼうのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

この物語は「千と千尋の神隠し」と重なる。千尋は偶然、異世界に入り込むが、眞人は、義母を連れ帰るという目的で塔に入る。どちらも親を連れ帰るという結果は同じ。親の知らぬ間に子は親に並び超えてゆく。

千尋のハクは、眞人のヒミであり、湯婆婆はサギ男、リンはキリコ。夏子を連れ出すことを阻む式紙は、ハクを襲った紙人形。眞人が夏子を助けようと呼びかけが「母さん」に変わり、親子となる。ハクや千が自分の名を思い出したように。自分を認め、受け入れる。

眞人が自分で頭を傷つけたのはなぜか。学校に行きたくなかったからか?夏子を探しに塔に入り、サギ男と共に異界に沈む。そこは、胎児の源を造る地獄、源のわらわらを食べるペリカンは赤ちゃんを運ぶコウノトリの対極。若きキリコに救われ、ヒミとも出会う。

大叔父の造る世界はインコに支配され、害なす者は石が電気を発して反応する。三途の回廊を抜けると大叔父の楽園が待ち受け、創造の源泉となる岩塊が浮かぶ。

創造主は、命尽きようとし、この世界を守る為、眞人に継ぐ事を求めるが、眞人は傷の罪を告白し、資格も無く、現世に戻ると断る。大叔父の積み石は崩れ、楽園も塔も崩壊し、現世に戻った眞人や夏子、青サギは塔の崩落を目撃する。一緒に逃げたインコ兵は、ただのインコとなり糞を落とし去る。

眞人の大人へのイニシエーションは終わり、数年後、両親に呼ばれ、自室を後にし、弟と共に4人でこの家を去る。眞人はこの世界で大叔父のような世界を創ろうともがく、それは日本の再建の一翼を担うこととなるだろう。でも、それが理想の世界ではないことは、私達が知っている。そして、そのバトンは確かに私達に託されているが、それに応えられているだろうか。「私達はどう生きるのか」

宮崎駿の「仕事の流儀」ドキュメンタリーを見て、この映画が観たくなった。アオサギが鈴木P、大叔父が高畑勲とのこと。制作中に高畑氏が亡くなり、宮崎氏への影響は計り知れなかった。眞人は大叔父の世界を継ぐ事を拒否し、現世に戻る。アオサギ等の友と共に元の世界を生きると。高畑氏と別れを告げ、今少し、鈴木P達と創造の積み石が崩れるまで、作品を産み出すという決意なのか。
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