エブリデイねむろう

ゴジラxコング 新たなる帝国のエブリデイねむろうのレビュー・感想・評価

4.5
「キングコング 髑髏島の巨神」(以下髑髏島)よりつづくキングコングシリーズ第3弾にして、モンスター・ユニバース第5弾。
監督:アダム・ウィンガード

未確認生物特務機関モナークがとらえた異常なシグナル。
それはゴジラとコングを新たな戦いへと導く予兆だった。

記憶力のないトカゲが暴走する映画。

今回も最高の怪獣プロレスを見せていただきました。
アダム・ウィンガードには感謝しかない。

まず本作は「髑髏島」に端を発する"キングコングシリーズ"の直系であることを確認しておきたい。
そのため、タイトルにこそ「ゴジラ」の名前が最初に踊っているが、作品の主人公はあくまでコングであり、ゴジラについては客演にちかい存在感。
実際、本作においてもコングにまつわる物語が中心となっている。

怪獣シリーズでお荷物になりがちな人間パートだが、本作ではかなりキャストを削りシンプルな構造になっている。
人間は基本的に怪獣たちの行動を通訳する狂言まわしに徹する役まわり。
物語も「母と娘の家族もの」という一点に絞りこみ深掘りもなし。
内容は正直かなり安っぽい感じではあるが、不覚にも最後で感動してしまった。

和製ゴジラのとある設定につながる展開もよきものと思う。

物語全体としてもご都合主義だけで展開される脳死系ノンストップ・アドベンチャー。
地下世界の存在とか、地上と地下をつなぐワームホール、モナークの謎技術など気になる点は多いのだが、そこいらの説明は一切なし。
「あるんだからあるんだようるせぇな!」といういい意味での開き直りを感じる。

正直、前作まではゴジラという怪獣のメタ的解釈や世界観などの説明に右往左往させられていた印象がつよく、そこが映画をつまらなくしている要因にも感じられたので、これはいい判断に思う。

ただし、その代償として、総じて子ども向け映画のような安直さと軽薄さが色濃く出るようになったことは否めない。
しかしながら、これは低年齢層でも抵抗なく楽しめるよう調整されていると見ることもできるし、実際、キッズムービーとして振り切ってしまうのは英断に思う。

というか、こんなアホな映画を大の大人が屁理屈こねて鑑賞してなにが楽しいんだ。
クソデカペロペロキャンディーを片手に鼻水を垂らしながら鑑賞するのが、観客としての正しい姿勢であろう。

さて、アダム・ウィンガードという監督は言葉をつかわない感情表現がうまい監督だと思っている。
本作はそんな監督のすごさを再認識させられる映画でもある。

映画序盤で「クソガキ」が出てくるのだが、こいつの演技がすさまじい。
コングを騙して罠にハメようという策略を、直接的な表現を一切つかわず表情だけで伝えてくるすごさ。
そんなコングに優しくされて次第に心変わりしていく過程。
一切の言葉を介さず感情を的確に伝えてくるサルたちのドラマは、ほんとうにすごいもんを見せられたという感動があった。
CG技術の発展はもちろんそうだが、やはり見せかたが抜群にうまい。

映画前半の見どころはここでまちがいない。

さて、肝心かなめの怪獣プロレスについて触れる。



















お気に入りはエジプトのシーンです。
あそこは劇場だということも忘れて爆笑してしまった。
というか、よくあれをみんな我慢できるな。
笑うでしょあんなもん。

あ、ネットミームになったゴジラとコングの並走シーンもちゃんとありました。

最後に、ゴジラの扱いについて。
冒頭で述べたように本作はキングコングシリーズの直系にあたる。
そのためゴジラは、あくまで「コング作品のゲストである」というかたちになっている。
少なくとも、製作サイドはそのように解釈しているはずである。

その割に、強いのか弱いのかわからん感じになっていたが。
まぁ、そこも含め「ノリ」として楽しむ映画であろう。

気になったのは、今回、ゴジラとコングそれぞれにライバル怪獣があてがわれるかたちになっているのだが、ゴジラサイドの怪獣がちょっと物足りない。
前半でのゴジラの行動がネタふりになっているぶん、もっと強烈なやつが欲しかった。
「コングの物語」としてあの展開は正しいのだけど、せっかくのゴジラが本当にただの当て馬にされてしまっていて、ちょっと不憫に感じた。

次はゴジラにもいい対戦相手をお願いしますよ。

2024ー新005