烏丸メヰ

オファリング -悪魔の生贄-の烏丸メヰのレビュー・感想・評価

オファリング -悪魔の生贄-(2022年製作の映画)
3.4
ユダヤ教徒の親子ソールとアートは不仲だったが、アートの妻が妊娠、ソールにとっての孫の誕生を控え、アートは長らくぶりに実家である葬儀屋へと帰省した。
そんな夜、石の首飾りをつけた自殺者の遺体が搬送されてくる……

「オファリング」は、日本語にすると「供物」のような意味。
祈りや聖句箱などユダヤ教の文化を懇切丁寧に折り込みつつ、言い伝えの魔物の脅威を描いたフォークロアホラー。
落ち着きのある画面の雰囲気と、個人的に良いフォークロア作品の最大条件である
“民話的・宗教的伝説の質感ある恐ろしい存在の姿形や伝統の術をきちんと描写し(CGや特撮の技術の稚拙さは関係なく、正々堂々描き、見せる)デザインする”
“逃げ(名前流用止まりや、チープにならんとするあまりぼかすようなアーティスティック風)をせず見せる”
というのをしっかりと観られて嬉しい。
(各種台湾ホラーや、最近だと『イビルアイ』や『ノセボ』がこのタイプ)

説明台詞(しかも宗教の違う人へのユダヤ教の説明とかではなく、今どうしてこうなのかの状況経緯を全喋りする)任せで回想シーンを交えない「キャラクターの人となり分からせ」が目立つのと、ホラー表現をジャンプスケアしか知らんの?ってくらい、恐怖よりビックリに訴える手法一辺倒なのは残念。
特に後者。これだけ造形と雰囲気が良く、しっかりと魔物のデザインを見せた絵づくりを正々堂々してくる作品なので勿体なさを感じてしまった。
烏丸メヰ

烏丸メヰ