こたつむり

暗黒街の顔役のこたつむりのレビュー・感想・評価

暗黒街の顔役(1959年製作の映画)
3.1
♪ オレは今日をゆく
  オレは今日を生きる
  さらば昨日の夢

1959年(昭和34年)の色づいた街。
そうなんです。
本作はモノクロじゃなくてカラーなんです。とても貴重なフィルムですね。

終戦から14年。
東京の空は広く、銀座の一等地でも“みすぼらしさ”は否めません。でも、そこに集まる人たちは“今”を楽しむ活気に満ちていて、これが高度成長期の熱気なのでしょう。

また、物語も当時としては斬新。
右を見ても左を見ても時代劇ばかり…そんな中で描かれたヤクザの内輪揉め。アクションや小道具は貧相かもしれませんが、時代を考えれば“ナウい”作品であるのは間違いありません。

しかも、テンポが良いんですよね。
物語がググっと動くのは中盤以降なんですが、ベタベタした描写を避けているので、人情物語の側面があっても“肌にまとわりつく”感じはないのです。

さすがは岡本喜八監督。
デビュー三作目とは思えない筆致でした(それにしても、昭和の創作スピードはスゴいですね。1年に何本映画を撮ったのでしょうか…?)。

そして、役者さんの起用も斬新です。
誰もが認めるスターの三船敏郎さんを端役にするなんて、なかなか剛毅な選択。また、佐藤允さんの存在感は主役を喰らうレベル。こちらも必見です。

ただ、正直なところ。
シナリオの出来栄えは微妙だと思います。特にキーマンとなる主人公の弟(演じたのは宝田明さん)に“覚悟”が見えないのは致命的。我を貫こうとする駄々っ子に感情を寄せることはできません。

あと、風呂敷のたたみ方もいささか強引。
昭和らしいと言えば昭和らしいんですけどね。こういう作品の“アンチ”として、余韻を大切にする物語が生まれた…と思えば良いのかもしれません。

まあ、そんなわけで。
歴史を学ぶ気持ちで捉えた方が面白い作品。
例えば、昔の遊園地にはブランコやシーソーがあったんです。僕も『ゲゲゲの鬼太郎』を読んで知っていましたが、映像として観るのは初めて。とても新鮮でした。
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