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死霊館のシスター 呪いの秘密のaのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

・本作の原題は『The Nun Ⅱ』であり、1作目の『The Nun』(2018)(邦題は『死霊館のシスター』)の続編として位置付けられている。そもそも本シリーズが、死霊館正史の外伝としてシリーズ化した出典は、『死霊館』(2013)で登場したあの修道女さんのインパクトがものすごく強かったために、誰しもの記憶に残ってネットミーム化したことにあるのだが、Thu Nunを見た後ですら、まさか外伝の2作目が制作公開されるとは思ってもいなかった。

・これは作品の評価に対する結論ありきの執筆になってしまうが、シリーズ化して映画を公開することは、非常に金の源泉になるのだ。これまで数多の作品がそれにより自身のネームバリューを切り売りしてきたし、また現在進行形でむずかしい続編が大量に粗製濫造されている現状があるにもかかわらず、この状況というのは一向に改善されることがない(その意味で、いまや「シリーズ化」と「面白い作品」というのはほぼ対義語に近い認識がされているし、実際にそうだ)。

・それはどういうカラクリかといえば、株式を操作している機関投資家や投資会社というのは、たいてい文芸に精通のしていないまったくの素人が多いので、「続編公開が決定」ということがニュースで報じられると、それだけで予備的に株式を買っておくよう、AI等のコンピューティングシステムに学習させている、もしくは自身で買っておくケースがほとんどで、その少しの買いが何百万人分も重なるので、株式は一度に上昇、それらのニュースによる波及効果により、次の映画の制作資金を一挙に稼ぐことができる、というシステムが資本主義の先端では構築されているのだ。

・例えば積立NISAというのはそれを応用したシステムとなっていて、株式市場にまつわるニュースや、他の株高という「上げ」の情報をコンピュータが自動で検知し、それに基づいて後発的に、かつ少しずつ自動で銘柄を判別・購入してくれる、といった格好である(ちなみに、NISAでは、一度自動で買ってもらった株式は売りに出すことができないという恐ろしい制約があり、実はそれだけでも計算外のうちにとんでもないリスクを一方的に抱えさせられていることになる(数字に弱い人ほど、計算外のリスクは自力で計算できないので、証券会社はそのような顧客をターゲットにしている。今でも実際に使われている証券用語で、個人で投資をしている投資家のことは「ゴミ投資家」と呼ぶ)。勉強をしていたとしても、NISAに限っては絶対に手を出すべきでない)。

・昨今のディズニーが続編や制作日程を大量に発表したり、またディズニーに限らずCEO自身が表立って今後の展望について印象的な発言を繰り返していたりするのも、基本的には株式操作を目的としたペップトーク(モチベーショナルトーク)である。消費者心理としてはそこまで美味しくないような、もしくは苦虫を噛み潰したようなインパクトを与える情報であっても、我々がそれらに対して何かと反応する(何なら観てしまう)ことにより、すでに株式と相場は上昇し、ディズニーは発表会だけでも数額の世界で巨額の利益を獲得したことになるのだ。

・ともあれ、映画業界は1920年代以降、プロパガンダのカウンターとして、自由民主主義や反権威主義、その他思想的な卓越性を多分に備えていたにもかかわらず、この5年ほどで、面白い映画より先に話題性の高い映画や「人気」の映画が、アカデミー賞や他のカンヌ、パルムドールでも席巻される機会が圧倒的に多い。本年度でも数多の映画祭で多数ノミネートした、一応フェミニズム映画の体裁を取っているものの、実は1960年代以前の男尊女卑を暗に礼賛する内容の『哀れなるものたち』(個人的な感想ではるが、しかしこれを見てから今日まで、ショックでやるせない気持ちが続いている。表現は劇薬ということの悪面を思い知らされる)を鑑賞したときは、売れれば面白いのだという、最悪な資本主義のロジックを垣間見たような気がしたのだ。興味を惹き、インパクトのある話題に対し、没入し食いつきたくなるというのは当たり前のことで、それより重要なのはそこに無条件で迎合するのではなく、一度落ち着いて思考してみるという所作で、それこそが映画の俯瞰性であると同時に知性主義の源泉でもあるはずだったのだが…

・余談ばかりになってしまい申し訳ないが、しかしそのようにどこか明後日の方向を向いて制作された作品がコロナ禍以降あまりに多すぎる。本作の制作体制にも疑問が残る。監督はマイケル・チャベスなのだが、彼が『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』を(ワン監督以外で)担当したシーンの中で、果たして目を引くようなシーンがいくつあったのか、想像が付かない。さらに本作は、題名と内容が思いきり乖離している点でも、昨今のシリーズ化による邪悪な恩恵を受けている作品でもあるだろう。監督は本当に前作を鑑賞しているのか?マーベル作品の監督ですらマーベル作品を全然履修していないのにシリーズモノを制作できるのが昨今のハリウッドなので、仕方ないのかもしれない。これらを踏まえて、本作は”Nun Sense”ということに違いない。
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