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ソウ3のaのネタバレレビュー・内容・結末

ソウ3(2006年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

・本作は、前作『ソウ2』(2005)の成功がわかった公開週の週末に制作が決定された。監督はあまりに早く続編の制作に付きっきり状態だったため、『ソウ2』が成功作だとすら認識していなかったそう。

・アマンダは当初、リンを掴んで脅すようなキャラクターではなく、「クソ野郎」と吐くようなセリフもアドリブらしい(実際、彼女は掴まれた時にめちゃくちゃ驚いている)。アマンダが脅すことで一気に彼女が狂人化するので、初めて観た時爆笑してしまった。いくら弟子とはいえ、凄まじい強迫観念(しかもぼんやりとして、どこにキレるポイントがあるのか全然分からない)に駆られていて、かなり面白かった。

・全2作同様、本作もトロントにある1倉庫内で全ての撮影が完結されていた。その割には本作は結構スケールや場面転換が多めだった気がする。この点については一家言あって、というのも全2作は全編を通して密室や部屋の中でゴアが展開されていくという、とてもミニマムな面白さに詰まっていたのに対し、本作は人を一人殺めるのにそれ専用のセットや舞台装置を作り替えていて、それはそれで面白いけれども、全2作のような密室的な良さは結構薄らいでしまっているように思えた。本作の予算は1000万ドルで、前作の予算は400万ドルなので、密室でないのはその影響が強いのかと思う。

・本作は珍しく、制作中に常にリー・ワネルというシリーズ当初からのライターがどんどんと物語を書いていくという手法を取ったそう。本作の脚本はかなり行き当たりばったり感が強い(特に治療室での一連の展開は、実際の治療か!と思うくらい立ち往生していてかなり良かった)のは、おそらくこのおかげだと思える。

・映画の中での脳手術のシーンは、レーティング機構にまったくカットされなかったのだが、その理由は、制作者たちがプレゼンするとき「皆んながテレビの医療ドキュメンタリーで見ているものとなんら変わらないものです」との主張が受け入れられたかららしい。そんな…しかし、この脳手術のシーンは黒いというよりかなり精緻にできていて、それをソウシリーズ特有の無骨な機器とセットで鑑賞できる(特に、ピザカッターのような電動鋸で頭を開けるなど)のは、後にも先にももうない体験なので、こういうシーンは満点を挙げております。

・「豚のバット」のシーンには、4頭の豚が実際に使用され、さらに豚の小道具で使用されたウジ虫に限っては、本物を持ってきてセットに詰め込んでいたらしい(消毒済み)。監督は、このトラップをもっとも気に入っているらしい。ブタが流れ出てくるシーンはギミックとして素晴らしく良くできている。ちょっとストーリーをつけようとして子供の笑顔のインサートがやたら多く、インサートとはいえ子供の笑顔と腐った豚が交互にかわるのは結構萎えてしまうのですが、それを抜きにしても腐った豚を浴びせる映画はソウ以外では観られないオリジナリティ溢れるものなので、これも満点です。

・あの瀕死寸前の状態で、ジグソウが人形に声をいちいちアテレコしているのはかなり可愛いと思う。髪を切るのにバリカンを使うくらいデイケアの描写が徹底されているのに、そこら辺が大雑把なのも面白い。というか、ジグソウの部屋自体、死霊館並に動物の骨や置物、無数の張り紙とかのガラクタが多くて好き。普通にオシャレという。でも、オシャレでなければここまでアイデアに溢れた殺しの数々は思い付かないということなのか。

・プロデューサーのホフマン氏は、本作公開の数週間後に突然亡くなった。

・双方&感想。リンの開頭手術に伴う脳のセットや、腐った豚が流れ出すシーン、最初の鎖の繋ぎ方等、相変わらず景気の良いカットが断続的に続くので、十分に満足度は高いです。しかし、前作の密室を利用した針風呂のシーンが、ギミックや意味論、物語的にも完璧なオチすぎて、それらに比べると、確かに人殺しギミック映画としては十二分に観客にみたいものを提供してくれているのですが、もう少しだけ物語性があったらもっと面白かったのかなとも思いました(許すか許さないかというのは、物語というよりは個人の内心の話で、その決断に主軸を当てるのは映画的な盛り上がりには少し欠ける印象があります(極論、許せば良いだけだから))。でも、ソウシリーズ全体として見ると、本作は相変わらずやることをやってくれて、十分アリな感じでした。なんなら、アマンダがリンに針穴風呂返しをしてくれたら面白かったです(このシーンが好きすぎるだけです)。
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