サンタ

ミッシングのサンタのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.3
「ミッシング」
英題「missing」

“その事実が面白いんだよ。”

石原さとみさんの集大成。
感情の爆発、泣き崩れる演技、特に顎が震えている演技が凄まじかった。
沙緒里は悲劇の主人公だ。娘をさがす母親だから。しかし、今作は一筋縄ではいかない。心の疲弊に耐えかねて、周りに当たり散らす。舌打ち、奇声、空回り。この映画は被害者の加害性も描いている。
沙緒里の旦那さん、青木崇高さんが演じる豊も人格者であるが、心の底では、沙緒里と沙緒里の弟を責めている。
他にも、沙緒里を取材をしている記者も、表向きはいっしょに探そうとするが、内心はもう見つからないと思っている。
他者の言葉に傷づきながらも、自身の言葉で他者を傷づける。逆も然りで、やる気がなさそうで、偏見で悪い人、あまり良さそうではないと思っていた人が、味方になって寄り添っていく。
性善説があるように。性悪説があるように。完全な善人は存在しない。完全な悪人はもしかしたらいるかもしれないけど、今作を見る限りでは存在しない。
このように、人間の表と裏の心情、二面性がしっかりと描かれていて良かった。”人間描写の鬼“である吉田恵輔さんの手腕には驚かされました。
意地悪だなと思ったのは、周囲の人物の様子。ヤクルト1000をよこせだの、ぶつかっただけで大声での喧嘩、今、この状況でそんなに聞くのと空気が読めないおばさん、知り合いのお母さんと何も知らない子どもの無邪気な発言など。
この居心地が悪い感じ、こういう人いるよねと思うほどのリアリティでした。
これらの周囲の人物は、吉田恵輔さんのワークショップ・オーディションで3000人から選ばれた個性豊かな31人が出演しており、(詳細はとってもとっても豪華なパンフレットを見てください✨)一人一人に丁寧な演出をしたおかげで、作品にリアリティが増して、少しコメディ(ブラック味)がありました。
真剣になる人がいれば、緊急事態になれば、嘘の情報を流す人がいる。誹謗中傷をする人もいる。(よりによって、ネットの掲示板は駄目だよ、石原さとみさん。)
警察になりすまし、相手の心を弄ぶ。
ここの警察署の演技が圧巻だった。
SNSを、ネットの掲示板を見るなという旦那さんの意見は最もだけど、インターネットはより多くの情報を集めることができる。より多くの情報を知れるからこそ、無意識に自分を傷づけてしまう。
ライブに行かなければ良かった。
いっしょに遊んでいて、子どもが失踪、もしくは考えたくもないが誘拐された方がまだ腑に落ちたかもしれない。
しかし、自分が楽しんでいる裏で、子どもが居なくなるのが余計に後悔、罪悪感が心を蝕んでいく。
他にも、報道の難しさ。
僕もニュースの見方が変わった。
今までは面白そうな、興味深いニュースばかりを取捨選択していたが、もう少し視点の幅を広げていかなければならないと考えさせられた。
最後に、この映画は果たして終わったのだろうか。僕はエンドロールを見る限り、地続きであの2人の物語は続いていくと思う。ピアノの伴奏も素敵でした。
娘を失ったとしても、誹謗中傷を食らおうとも、どんなに苦しい状況下でも、私たちは生きていかなければならない。
またいつか、もう一度この映画を見たいと思う。
ありがとう、製作陣の皆さま。
最近の日本映画は傑作が多いですね。
このまま日本映画界が盛り上がってほしいし、世界に邦画の魅力が伝わると嬉しい!
邦画が好きな方も、少し苦手な方もたくさんの方に見てほしいし、おすすめ‼️

〜あらすじ〜
沙織里の娘・美羽が突然いなくなった。懸命な捜索も虚しく3ヶ月が過ぎ、沙織里は世間の関心が薄れていくことに焦りを感じていたが...。

2024-10 🚸
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