つるつるの壺

首のつるつるの壺のネタバレレビュー・内容・結末

(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

製作費が15億と日本映画では大作の域に入る映画で、こんな好き勝手にやっていいのかというのが驚き。
エキストラを多数動員した合戦シーンのスペクタクルに見られるようなルックのリッチさと相反する人物の軽さのギャップが個人的には好み。時代劇において現代語を使用したスラップスティック風味は少し町田康を想起した。
ろくでもない人物たちが遊び半分で大勢の命を消費しながら戦を繰り広げることで残酷性が増す。
天下人を目指して隙あらば策謀の種にしていく即物性を皆が備えているのが面白い。姫路城までの帰路で疲れ切った秀吉が川を渡る場面で、秀長が「いま兄者を川に落とせば俺が天下を取れるのに」と冗談交じりで言うが冗談に聞こえない殺伐とした人間関係は上手く描けていたと思う。
百姓から天下統一を成し遂げた秀吉は映画監督になるための規定ルートを通らず、独自の映画文法を確立して世界のキタノになった北野武本人を重ねずにはいられない。