メザシのユージ

落下の解剖学のメザシのユージのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.8
2024/02/23
吉祥寺
(10本目)
この映画はまず法廷もので、倦怠夫婦もので、少年の成長譚でもあった。

まず、法廷ものとして。
法廷は皆んなで何があったのかを考えるという不思議な場所。法廷物の映画は大好きだけど、いつも変わった場所だよなと思う。真実は誰かが言ってるのに、皆んなで何が本当かを決める。

窓から落ちて亡くなった夫は自殺なのか妻が殺したのか。次々と証言台に立つ人の話を聞いてると、どっちなのか本当にわからなくなる。壁についた血の証言はどっちの説明も「ありえる」と思った。だから息子が最後に証言したいとなった時はお母さんだけじゃなく、観客全員が「何を言うの?」となったと思う。

次に夫婦ものとして。
完全に倦怠夫婦ものだった、「ブルーバレンタイン」なみに辛いやりとり(夫が録音してた)もある。夫は彼女に小説の原案を盗まれたと本当に思っていたのか?

少年の成長譚として。
父親か母親か、どちらかを選ぶとして迷ったとしても裁判所から派遣された女性が「決めなければいけない」と告げる。

全体通して、息子に語った父親の言葉「命があるものはいつかいなくなる覚悟をもて、それでも人生は続く」。
夫は自分が死ぬことで、妻に小説のネタをプレゼントしたのでは?夫婦喧嘩を録音したのも自分が死ぬことを決めていて、そのためだったのでは?最初に音楽をかけたのは客を早く帰すため?

犬の演技が凄まじい。グッタリして揺さぶっても起きない、驚いた。



ブルーバレンタイン並みに夫婦の辛い物語。

決められないことが2つあっても、心を決める必要がある。