フラニー

瞳をとじてのフラニーのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.8
エモーショナルな169分でした。

ふたつの顔がひとつになった悲しげな胸像、悲しみの王 と名のついた美しい城。
悲しみの王は余命いくばくもない。そばにいるのは中国人の執事。(この人がかなりベタな描き方であやしいw)王はある男を呼び寄せ、たった一人の娘、チャオシューを探してくれと頼む。
えー、これがエリセ監督?と、なんだかおかしな感じと思った頃に、劇中の映画と気がつく。
映画の撮影中に、主演俳優は失踪してしまう。失くさないでくれと渡したチャオシューの写真とともに。

そこから22年後の現在へ。

この映画の監督だったミゲル(ミゲルってエルスールの原作に出てくる、父のもと恋人の息子の名前なの!)は、有名俳優フリオの失踪事件を番組にしたいとオファーをうける。

古い映画仲間マックスを訪ね、保管されたフィルム缶の中からあの映画の一部を借りるシーンがとても印象的。映画のデジタル化によって、棺と化したフィルムたちを嘆く二人。

フリオの娘アナ、もと恋人ロラと当時の記憶をたどるも、彼女らも、ミゲル自信も今の自分の居場所に戻ってゆく。
そしてここから物語が、進んでゆく…

これまでの作品へのノスタルジーを感ぜずにはいられないんだけれど…

アナの中にある父の不在、これはエル・スールの少女エストレリャを思い出す。
映画の中の映画と言えばミツバチのささやきの中のフランケンシュタインを思い出すし、悲しみの王ってフランケンシュタインみたいって思うのは私だけかしらん…🤔

そしてなによりも、アナのあのセリフ…😭泣けるというか、鳥肌立つというか、ああ…。言いたかないけどエモすぎます。このシーンと、ラストシーンが映画のタイトルにもつながっているでしょうし。
黒猫ミシヘルが、アナと戯れる瞬間がありましたよ!これは確実にファンサですよねー。

そしてマックスが映画のフィルムを車で運んでくるシーン!あれにはワクワクしました。ミツバチのささやきの村に映画がやってきた時、子どもたちに映画の缶詰めだって言ってたあの興行師を思い出します。
映画を観ているフリオやアナの表情も光も、あの時のまま。

思い出ばかりでなく、現在のシーンでも印象的で詩的なエピソードがたくさんありました。
いつも素足でいるフリオ、
漆喰だらけになっているおじさんふたり、
ワンコに音楽、海…

ああそれにしてもミゲルもフリオも素敵な俳優さんでしたぁ。
そしてアナ・トレントの信じられない美しさと可愛らしさ!ピンクのスカーフを巻いてるアナったら!

監督とアナが50年間ずっと連絡を取っていたというエピソード記事を読みましたが、
なんと素敵な事でしょうか。「ビクトル・エリセは人性を見守ってくれる人」とアナが答えていました。
アナ・トレントの俳優人生を監督は責任もって見守ってくれていたんだなぁ。子役って
大変なことたくさんあるでしょうから、でもこの二人は映画でちゃんと繋がっているのが映画を愛する者として、心から嬉しく思います。
フラニー

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