つるつるの壺

パラダイスの夕暮れのつるつるの壺のネタバレレビュー・内容・結末

パラダイスの夕暮れ(1986年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

とってもキュートな作品。

ゴミ回収業者として働く男とスーパーのレジ打ちの女の恋模様を生活の中に描写する。

男の方がベタ惚れで、デートをすっぽかされたことに内心怒りながらも澄ました感じで家から追い出した次の日は会社に行けないくらいダメージを受けているのが面白い。女が去ってから部屋にレコードプレイヤーやテレビなどを新しく導入してみるも、どれも心の隙間を埋めてくれるほどのものではないので次第に放置されるようになって部屋が荒れたりと、失恋の影響をモロに受けているのが垣間見える。そういう間接描写が上手い。別れてからも女の職場に顔を出して、精神病院に入っている妹の見舞いに一緒に行こうとか言うし。ノーダメを装いながらめっちゃ未練たらたらなのが情けなくてしょうがないが、そこがいい。

女の方は男に対してここではないどこかへ連れて行ってくれる人かもと期待したが、最初のデートでビンゴに連れて行かれ、レストランは足元見られて入店拒否、仕事中に職場に来たりとダサいしちょっとグイグイ来るのがダルくなったのかデートすっぽかしで別れることになるわけだが、新しく付き合った男は金はあるけど人を見下すナルシスト野郎で、今にして思えばあの人ダサかったけど悪い人じゃなかったよなと後悔。そういった自分の気持ちを出せずにすれ違う不器用な彼らの関係性を応援する映画かなと思った。

留置所で一緒になった後ろ髪の長い粗野な男が個人的にはいいキャラだなと思った。こいつがトラブルのもとになるのかなと思ったが、紹介されたごみ回収の仕事は真面目にやるし、困ったら助けてくれる(子供の貯金箱から金を奪ってでも)。普通にいい奴だった。『真夜中の虹』でも煙草を雑に投げて寄越す奴は主人公に手を貸してくれる奴だったが、そういうのが今後の作品でもあるんだろうか?あったら嬉しいな。