eulogist2001

普通の人びと:彼らを駆り立てる狂気のeulogist2001のレビュー・感想・評価

3.6
1997年発行の書籍を原作としたドキュメンタリー作品。

・普通の人々がいかにホロコーストに加担するのか。強烈な反ユダヤ主義者であったり、ナチズムに傾倒していたわけでもない「普通のひと」が仕事としてひとを惨殺する。トラウマも最初はあるがほとんどの人はすぐに慣れてしまう。殺人を忌避するのはごく少数で、特に罰せられることもなかったようだ。
・積極的に惨殺を愉しむグループ、仕事として淡々と片付けるグループ、忌避して直接の作業はしないグループ。大きくはこの3つに当て嵌まるようだ。

・ひとはどんな「状況」も受け入れてしまえるのだろう。柔軟性といえばそれまでだが、ひとを惨殺する側に回るのか、救う側に回るのか。その境界線は限りなく低いのかもしれない。

・世界を救いたいと思っている革命家が平然とテロや内ゲバでひとを殺したり、寛容や赦しを教える宗教信者が異教徒や裏切り者を得意げに惨殺してしまう。矛盾に満ちているようで、根っこは一緒だろう。「自分の側」にいない者は異物や敵として排除する。そこに喜びさえ抱く。それは「本能」なのかもしれない。人間の全員が等しく同じ程度には持たないとしても、一定数は必ず生まれてくる。多分、ひとの生存戦略としては有利なのだ。だからゼロにはならない。
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