エルヴィス・プレスリーに見初められた14歳の少女プリシラ。
誰もが羨むヒロインが、世界的スターの邸宅に囚われた日々の中で大人になり、そして別れを決断するまで。
二人の年齢差は10歳。プリシラには恋人以外に頼る人はなく、モラハラやDVに抗う術がありません。
撮影やツアーで家を空けがちなエルヴィスは、多くの女優と浮名を流す。少女は雑誌でそれを知る。常にメディアとファンに家を囲まれ、転校先で友達も作れない。いつでも彼からの電話を取れるよう、働くことも禁止される。
薬を飲まされる。君には青いドレスが似合う、柄物はダメ。自身のファッションの好みが形成される前に、服もメイクも髪型も、エルヴィスの色に染められていく。
徹底してプリシラ目線で描かれる物語はスターの功績に興味がないようで、よくある伝記映画とは一線を画します。
ガーリー🎀🩵にラッピングされることでより際立つ孤独と、“純愛”のグロテスクさ。エルヴィスだけの純真なお人形さんでいてほしいという身勝手な願いによって、プリシラは成長の機会を奪われた。
映画がひたすら可愛くて退屈なのは、彼女の世界がそうだったから。
私には残酷なグルーミングにしか思えなかったけれど、離婚後も二人はいい友人関係だったそう。御年78歳のプリシラご本人が「今でもエルヴィスを深く愛している」と聞いてしまうと、外野は何も言えないよ。
ドリー・パートンの”I will always love you”が、これまでで いちばん美しく聞こえました。
バズ・ラーマン版『エルヴィス』も、もう一度観たいな。ちらつく大佐の影。
こちらのプリシラは、どんな言葉を残して去ったのだっけ。
