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市子の先生のネタバレレビュー・内容・結末

市子(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

話題作で、好みのテーマっぽくて見たら面白かった。ただ主演女優の演技のすごさはいまいちわからなかった。

見ながら、これは宮部みゆきの『火車』だなと思った。火車では徹底的にヒロインの存在が外側からしかわからないし、物語としては断罪の方向へ行く。あと『白夜行』必死に生き延びようとする男女で、男は死に女は生き延びる。これも女性の心理はいまいちわからない。

市子はどうだろう。かわいそうな人でもあるし、夢のため幸せのために必死に生きている人でもある。物語としては逃げ延びるのか、断罪されるのか、うやむや。そこがちょっとな。悪くないけど。

市子はずっと搾取されていた子供である。ヤングケアラーであり、名前を奪われ、養父からも高校の彼氏からも身体を要求され、親しくなった同級生からは庇護もとい支配下にいるよう求められる。

たまごっちの話。あそこはせっかく出来た友人に負担をかけまいとたまごっちを差し出したのではないか。助けた気持ちに下心は無いけれど、ケーキを食べさせてくれて、下着も買ってくれる。このままこの子の庇護に入るのは嫌で盗んできたたまごっちを渡す。それは、親から面倒を見てもらうことと引き換えに名前を差し出した妹の世話をするという行為を通して学んだ結果だったんじゃないか。
他人に与えられたらなにかを返す。だから、高校の彼氏にも、付き合っていて好き同士だからという証明のために身体を差し出す。養父にも差し出すが、ほとほと嫌になったところで同級生の森が現れる。
ここでは、死体の処理をするという関係が生まれる。それには何を差し出せば良いのか。気が狂いそうだ。だから逃げた。
妹の死の処理を養父はし、その結果捌け口にされた。同じことの繰り返しである。

逃げた先でのケーキ屋の女の子。彼女はケーキを差し入れし薬までくれた。そのうえ一緒に夢を叶えようと言ってくれた。見返りを求めない優しさに触れ、やっと市子は市子として生きて行けそうだと思ったところで、また森に会う。

長谷川との出会いもケーキ屋の子と一緒で、焼きそばをおごってもらう。ものを与えられても返す必要のないやりとりと、日々の生活でやっと幸せを実感する。

森と離れてから長谷川に会うまで何があったのか、よくわからない。戸籍取得のために頑張ろうとしたがダメだった、ということだけだろうか。

最初に市子が逃亡したのは骨だけが原因だろうか。死んだ女性の戸籍を取得したら長谷川のもとに戻るつもりだったのか。
そこが曖昧なのがちょっと合わなかった。

森くんのアイスの棒の数、絶対市子に会えないかなって夏休みの間店に通ったってことじゃん。泣けるが気持ち悪い。見せてくるのが気持ち悪い。イケメンなら許すか?どうかな。好きな人ならどうかな?ちょっと気持ち悪いな。キモって、言っても良い関係なら良いかもしれない。

市子が買ってた文鳥、そのまんま籠の鳥ってことなんだろうけど、どうなったのかな文鳥。その行く末は描かれなかった、と思う。

あと蝉。生の儚さかなあとか感じた。死、まではいかない。ダリの蟻ではないと思う。

市子の黒のワンピースの意味について。長谷川と出会った時にも着ていて、贈られた浴衣もそれを意識した黒いもの。逃げる時も、映画の最後のシーンも身に付けていた。真っ黒ってことかなあ。罪であり穢れであり、イノセンスではない市子ってことかなあ~と感じた。あと、蝉か?わからん。
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