タイトルのタイポグラフィや自覚的なサウンドデザインはゴダールっぽいなと思っていたが、実際に濱口監督の意識下にはそれとなくあった的なことがパンフレットに書いてあった。そもそもの発端である石橋英子さんの音楽も良くないわけがなく。メインテーマはどこか「炎628」でかかるラクリモーザを彷彿とさせる時折不穏な旋律が乗った音になっていて映画の内容には申し分なくハマっているように感じた。そんな音楽が被さる冒頭とラストの森を真下から撮ったショットは、危うい心地よさとでもいうべき其れ。客観ショットからの巧みな車内ショットつなぎなど相変わらずハッとさせられるカットも満載だった。そんで移動を切らない濱口映画に面白くない作品はない。
物語に関しては結構タイトルまんまというか二項対立を突き崩す脱構築的な問いということでいいのかな。あの結末はまさに主人公が云う「バランス」をとったという解釈でいいのか。
