ナーオー

16ブロックのナーオーのレビュー・感想・評価

16ブロック(2006年製作の映画)
5.0
『リーサル・ウェポン』
『ダイハード』などに比べると小さい地味な作品ではあるけど、間違いなく隠れた傑作。

命を狙われている事件の証人の刑事が無事に送り届ける という犯罪映画としては決して珍しくないストーリーで、似たような作品ならクリント・イーストウッド監督・主演の『ガントレット』が印象的ですが、本作『16ブロック』は他のどの作品よりも登場人物の心情がとても丁寧に完璧に描かれており、よってラストシーンで味わえる感動が凄まじい。

主演のブルース・ウィリスの他のどの作品よりも疲れ切っており、ロバート・ロドリゲス監督作『シン・シティ』のハーディガン刑事よりも初老って感じ。しかしこのブルース・ウィリスの演技も最高レベルくらい素晴らしい。昼間から酒浸りのダメ男が証人のエディと出会ったことで、贖罪を果たす というこの役をブルースの味わい深い演技によってとても魅力的になっています。

証人役のモス・デフも本業はラッパーなのにも関わらず見事な演技。この2人の離れすぎず近すぎないバディ感もとても良い。

悪徳刑事役のデヴィッド・モースも一目でベテランとわかる風貌と貫禄たっぷりの演技と存在感。クライマックスで主人公とただ撃ち合って決着するのではなくて、長年相棒関係だったからこそ話し合いでお互いの想いを文字通りぶつけ合う というところも完璧だと思います。

映画最後のブルース・ウィリスの笑顔は他のどの作品よりも優しい表情で何度見ても泣ける。その時に"もう一回写真撮って"と妹に言うところとかマジで心が温まる。

DVD・Blu-rayに収録されている
もうひとつのエンディングもこれはこれで大好きです。バッドエンドという意見もありますが、切なくて悲しいラスト=バッドエンドという考え方が理解できないね〜

残念ながら本作がリチャード・ドナー監督の遺作となってしまったけど、本作が遺作で良かったと思う。こんなに渋くてカッコいい映画が最後の作品でめちゃくちゃイイ!!!
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