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トランスフュージョンのナーオーのレビュー・感想・評価

トランスフュージョン(2023年製作の映画)
4.0
想像していたよりもずっと渋い……

『ハクソー・リッジ』や『渇きと偽り』などに出演していたオーストラリア人俳優マット・ネイブルの初監督作品。主演のサム・ワーシントンとは『ハクソー・リッジ』で共演済み。

"退役軍人がそのスキルを使って犯罪に手を染める"という王道なストーリーの通り、自分好みなクライム・アクション映画で面白かったです。王道=B級アクション映画と思われがちですが、そんなそこらのB級映画と比べるとルックも全然チープではなく、アクションも地味ながらリアル。登場人物たちの複雑な関係性や細かな演出も本作が初監督作としては、とても良く出来ていたと思います。

まず主演サム・ワーシントンが素晴らしかったです。『ターミネーター4』や『アバター』以降、ハリウッド大作映画から離れたこともあって"一発屋"と言われることも多い俳優ですが、『サボタージュ』や『ハクソー・リッジ』では脇役として良い演技を見せてくれたり、『フラクチャード』や『ザ・ボディガード』という映画としては小さい映画ですが、傑作良作いくつもあります。本作『トランスフュージョン』、個人的には近年のサム・ワーシントンのベストアクトだと思う。

サム・ワーシントンの演技や存在感は本作の魅力のひとつ。職業軍人だったけど最愛の妻を亡くし、子供を育てるために退役。軍隊が居場所だった人が社会に馴染めない姿、営業先で馬鹿にされて、我慢ならず相手を脅迫してしまう場面は最高です。思春期の息子と上手くいかず、何を話せば良いのか分かっていない感じも良かったです。

また監督・脚本だけではなく、主人公ライアンの元上官ジョニーを演じたマット・ネイブルも流石は名バイプレーヤー。華のある俳優ではないけど、無骨でイカつい外見は本作の泥臭くダークなクライム映画の作風にピッタリ合っており、助演として良い味出しています。

マット・ネイブルが過去に脚本を担当していた『モーターギャング』のようにバイオレンスやアクションよりもドラマがメインの作品なので、アクションを期待すると肩透かしになるかも…

とはいえ、しっかり骨太な犯罪劇&丁寧な人間ドラマ。初監督ながら、とても良く出来た映画でした。マット・ネイブル監督には小粒でもいいので、サム・ワーシントンとまた組んであと2〜3本、こういう渋いクライムドラマを作って欲しいです。
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