寝耳に猫800

青春18×2 君へと続く道の寝耳に猫800のレビュー・感想・評価

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)
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全編ほぼ「過去」に関する映画、個人的だが映画には「今」が映っていて欲しいと思ってしまう、そうでないと見せ場が人物の感傷ばかりになってしまい(実際の生活でも感傷に浸ることには快楽があるし、それはそれで気持ちいいのかもしれないけど)、スクリーンを観ることの驚きや発見が薄れてしまう
(もちろん、映像におさめられる全てのことはすでに起きたこと=過去、つまり厳密にいうと映画には徹底的に過去しか映っていないのだが、ここで問題にしているのはそういうことではなく、主体となる人物にとっての過去/思い出ばかりが映っているのか、その人物がその時点で体験している今の映像が映っているのかという違い、全然関係ないが、小説は徹底的に過去や記憶が書かれていても楽しめる、なぜだろう、うまく説明できない)

とはいえ、旅と回想を往復しながらその記憶がリンクする構成はきっちりしているし、悲恋ものとしてはとてもトラディショナルな話であるがそれだけに泣かせる力を持っている、結局起きたことの重みに感動が寄りかかっているという点では例の10年と同じやり口といえばやり口だが、その手法をしっかり確立して再現可能に仕上げている時点で職人感ある

最後の30分の扱い、個人的にはああいう答え合わせを見せられると重複を感じてしまう、別にみんなわかっているしあとで想像するからそこまで細かくやらなくてもよかったのではと思うが、しかしここが泣きどころだしやらないといけないのか、うーん

スラムダンク、聖地巡礼、美しい観光地、台湾にはない雪景色など、台湾の人が反応しそうな日本が記号的に出てきたのだがこれは原作の影響なんだろうか、台湾の観光客を日本に呼び込むために作っていると言われても納得するかも、みんなこれ観てたくさん日本来てほしいねぇ

撮影、というかカラコレはいわゆるエモい色味で、パッと見は映えるが一番気になったのは台湾が全然暑そうに撮れていないこと、靄がかかってとても寒々しくてなんだか脱臭漂白されている気がしてとても悲しい、日本の寒冷地の色味とはよくマッチしていたので同じ作品でそこまで色味を変えるほうが違和感あると判断されたのかも、わからんけど

シネスコなので画面に広がりがあるが肝心なところでパカパカ連続で寄りを撮りすぎるので落ち着かない、切り返しも忙しない、せっかく画面が横に広いのだから台湾や日本の風景に色々なものが映り込んでいるのを観たいと思っていたが無駄なものは排除されている感じで横長のInstagramを観ているようだ、でも横長のInstagram、あったら流行るかもな

ロケ地のインパクトは強いがちょっと派手すぎてCGみたいになっているところがある(実際CGなのかも)、展望台で夜空を観ているシーンの背景、あれはいくらなんでもやりすぎに思えた、三宅唱『夜明けのすべて』で夜空に張り出した慎ましやかな歩道橋の二人を引きで撮った完璧なショットを観た後では、そのギラギラに胃もたれしてしまう、これはロケ地じゃなくて撮り方の問題か

ということで、見せ方やギャグなんかもかなり大味に感じるところもあったが、こういうものが世界基準なのかもしれない、勉強になった

追伸 :ジミーの部屋に飾られているスラムダンクのポスター、あのビジュアル日本で見たことない、台湾限定なんだろうか気になるなぁ
追伸2:アミ、前に描いていた壁画は躊躇なく塗りつぶすのに他の人が自分の絵に一筆入れたことに狼狽えるの結構こわい、他の場面でもアミにはちょくちょく優しそうに見えてこわい場面があった
追伸3:台湾の映画館ってエンドロール流れてる最中にシアターが明るくなっちゃうんだなぁ、はじめて知った
追伸4:清原果耶は全編素晴らしかったが、ノックされて開けられた時の返答「それノックの意味ないから!」、流石に速すぎないか?ラヴィットでキレキレの時の麒麟川島の返しくらい速い
追伸5:ジャニーズはあまり詳しくなく道枝さんをスクリーンで初めて観た気がするがとてもとてもかわいい、こういう後輩にたくさん焼肉を食べさせられる男になりたいものだ