烏丸メヰ

縄の呪い3の烏丸メヰのレビュー・感想・評価

縄の呪い3(2023年製作の映画)
4.2
日本でも五月人形で知られる、聖なる鬼神であり己もかつて自殺者であった「鍾馗」と、彼を祀り力を授かる道士を主人公にした、首吊り事件にまつわるホラーシリーズ。

前作までを継ぎ、映像も表現もパワーアップした完璧な続編!
「旧暦7月はあの世が近くなる(から諸々のタブーがある)」
「首吊りした死者を“肉粽(にくちまき)”と呼び、特別な供養を行う」
などの台湾の民間信仰や一部の習わし、
「道士はそれぞれに祀る神がいてその力を授かる」
「儀式で神の役をしている人を本名で呼んではいけない」
「名前を魔物や霊に知られると攻撃されるのでよくない」
など、道教儀式を知らないとやや理解しにくさはあるが、これらに興味があれば、導入にされる一連の説明で作品に入り込めるし、新たな主人公が立てられたことで3だけ観てもかなり楽しめる。

前作で道士に助けられ己の能力と向き合う決意をした少女や、おもしろ文字Tおじさん等も健在で嬉しいところ。

前作に比べ、定点カメラやアクティブなスマホカメラ等、様々な映像を使い分けての表現がかなり現代的。
現代的なのは映像効果だけではなく、鍾馗の儀式の美しさ荘厳さを継承しつつ、前作の主人公道士の息子である次世代の若者を主人公に展開していくストーリーとエンディングも新しい風を感じた。

かつて末娘を失った道士父子と、息子を溺愛する旅館の母子といった二組の親子を主軸にしたところも良かった。

台湾ホラーの典型である、
現代における怪異→解決するのは神仏と道士の術
って作りが私は好きなんだけど、日本人からしたら
“前半リング、貞子出たら後半陰陽師で退治”
みたいな急なジャンル変更に感じられてしまうかも知れない。
しかし台湾ホラーのここが、昨今の
“怖くないのを開き直るかスカしてるばかりで真面目に作らない、演者ファン向けJホラー”
よりずっと誠意があり真面目な作風(神仏や道士の文化を軽んじていないしきちんとクラシカルなオバケを怖く作ろうとしている)で好き。

道教儀式的に、そしてシリーズを通して重要で象徴的な、主人公が“神となり神の力を行使するため、祀る神を演じる”つまり神にシフトする化粧のシーンは、今作においては最も美しく胸をうつシークエンスの一つ。素晴らしすぎる。
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