イチロヲ

天城越えのイチロヲのレビュー・感想・評価

天城越え(1983年製作の映画)
4.0
天城峠を越えようとする家出少年が、遊廓から追放されてきた夜鷹(田中裕子)に心惹かれていく。松本清張の同名小説を映像化している、サスペンス・ドラマ。川端康成「伊豆の踊子」に対するアンチテーゼ的な位置付けとされている。

1983年の現代パートと1940年の過去パートを交錯させていく作劇。現代パートは、天城で起こった迷宮入り事件の時効後、当時の少年と警察官が再会するドラマ。過去パートは、事件発生時の少年と警察官(渡瀬恒彦)が初遭遇するドラマ。

まだ視野の狭い少年が、純愛を向けている相手の「淫売の顔」を見て、頭がどーにかなってしまう物語。このモチーフは応用が効くため、他作品にも様々な形態で用いられている(日活ロマンポルノにも多く見られる)。

少年と夜鷹の心の交流劇、捜査中の警察官が二人の足跡を辿っていく過程、自責の念に駆られたままで中年になった元少年の悲哀など、見どころは枚挙に暇がない。田中裕子の世間ズレした下級遊女ぶりも堂に入っている。
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