mh

わが道のmhのネタバレレビュー・内容・結末

わが道(1974年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

身元がわかるはずなのに行旅死亡人とされた出稼ぎ労働者が大学で使う解剖用の死体にされた事件が題材。
製作委員会には近代映画協会、川村セノさんを守る会、青法協弁護士学者合同部会の名前が並んでいる。
土台になっているのは「ある告発-出稼ぎ裁判の記録」という本。ググると作者の名前どころか事件の名前もヒットしないので、この裁判自体が公開当時盛んだった左派の反権力運動の一つだったんじゃないかと推測できる。
エンタメ映画の体裁をとりつつ、地方農村の出稼ぎ問題にもがっつり触れている。餌代を餌に豚の飼育を頼まれるくだりは、たいへんうまく貧困をエピソード化してある。金に困っているやつを使って小遣いを稼ぐやつがいるとかめちゃありそう。
売春する母親につきあわさせる娘のくだりも強烈。
旦那が帰らずアル中になってしまった奥さんのくだりをアクセントにつかていた。新藤兼人はこういうさじ加減が神レベルにうまい。
死体のカットが一秒にもみたないのがまた絶妙なんだけど、それを予告編に使うのはどうかと思った。
後半のハイテンションハイスピードの裁判も魅力。尋問される人間が次々と変わっていく。前半に登場した人物も次々に登場してくる。そうかと思えば疲労のために横になっている奥さんの姿が挿入されて、早い裁判との対比させてる。
勝訴の結果、金銭を得るという違和感も伝わってきた。裁判に勝ったのはあなたたち。これを主人公が代弁してくれる。
田舎に戻るための車に乗り込むところで、「大陸食堂」の看板を見上げたところでフリーズフレーム。
乙羽信子の佇まいもあいまって印象的なラストカットだった。
ほんと面白い。
mh

mh