垂直落下式サミング

親指さがしの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

親指さがし(2006年製作の映画)
3.0
親指を失った少女の霊魂と接触する学校で噂の怖い心霊ごっこ。軽い気持ちで始めたオカルト遊びが、思いもよらぬ恐怖を引き起こす。むかしからタイトルだけは知っていたジャパニーズホラー作品。
V6の三宅健は意外にも芝居がうまい。変なワイルド系衣装以外は全編シリアスムードだ。ヒロインの一人を演じる伊藤歩は清楚系で汗かき、真面目メガネな松山ケンイチは若手らしくとりあえず頑張っている。
また、途中で死んでしまう元グラドルの永井流奈も可愛らしかった。たまごっちを掘り返して雨にうたれる彼女の背後から、一撃で傘を貫通してくる亡霊のパンチ力には、さすがの私もビックリ仰天!
佐野史郎の刑事が、そこそこの頻度で物語に絡んでくるのはサイコサスペンス的であるし、親指さがしの真実を知る謎の老人に救いを求めるなど、ネット怪談のような伝承ホラーらしさも持ち合わせている。
だけど、肝心のお話が盛り上がらない。なんか伏線とかに整合性がなくて、肝心なところは大味だったりするため、結末に意外性がないし、感心もしない。事件の真相が明かされる場面は、やたらとタラタラとクドくて、表現としての切れ味も悪いと思う。
疑いもなく呪いと祟りに傾倒してこそ、邦画ホラーだろう。同時期の『着信アリ』『稀人』『水霊』などと同じく、本作も恐怖が恐怖足り得た理由を描くことに躊躇いがあるようで、ストーリーが核心的な部分に踏み込もうとするとテンポが落ち込んで、明朗さが損なわれて観るものの眠気を誘う。ジャパニーズホラーブーム末期の黄昏を感じる。
大手をふってジャニーズとか秋元康とかが絡んでくる頃には、後世に残る名作は出尽くしていて、あとから来たものの粗製乱造に文化は食い潰されていく。日本生まれのコンテンツは、そういう栄枯盛衰を宿命付けられているらしい。