TAK44マグナム

ゾンビ・ヘッズ 死にぞこないの青い春のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

3.1
人生の最後に観る映画が「死霊のはらわた」ときたもんだ!
・・・何故なら、監督のダディが「死霊のはらわた」のSFX担当だったから。


目覚めると、死んでいながら動けて頭もハッキリしている「ハーフゾンビ」になっていた主人公。
ゾンビと人間、どちらにも追われながらも同じ境遇の仲間を得た彼は、出ていった恋人に指輪を渡す為の旅に出るのですが・・・


世間の評価は中々に高いゾンビを題材としたハートフルコメディ。
う〜〜ん、個人的には、ちょっと合いませんでしたね。
モチーフを同じく「ロミオとジュリエット」に求めたゾンビ映画と言えば「ウォームボディーズ」がありますが、あちらの方が超ご都合主義的なハッピーエンドながら後味が良いぶん印象も良かったんですよね。

どうやらヒロインの父親がゾンビ発生に関わっているのは分かりますけれど、結局のところ、その原因や本当の目的は曖昧なままです。
後半はゾンビパンデミックは収まってしまい、ホラーとしての様相は控えめになります。
でも、森のなかをゾンビがフラフラしているようでは、とてもパンデミックが収束したとは考えにくく、更に言えば主人公は死んでいるわけだし、愛してるだの愛してないだのやっている場合じゃないというか、そんな甘い言葉がでても何か悪い冗談のようで完全にバッドエンドとしか捉えることが出来ませんでした。
第一、腐敗して(なにしろ腕やチンコがとれちゃうぐらいだし)死臭は臭わないのか?
ゾンビとキスできるのか?
そんなことばかりがどうにも気になってしまいましたよ。

主人公が何故に死んだのかを巡るドラマも軽く、その理由はヒロインにも大いに関係することなのに、真相を話してもヒロインの動揺した様子とか描かれないのは如何なものか。
黙って聞いているだけの父親も何だかな〜だし、そもそもマジで酷い父親だよ?
あいつもいるのにどうして大団円ぽくなるのか理解できませんでした。
主人公の意思が貫かれ、愛も得られるわけなので主人公的にはハッピーエンドなのかもしれませんけれど、こちらとしてはちっとも笑顔になんてなれずじまいでしたよ。
モヤモヤしたままのエンドロールでした。

あと、ゾンビハンターがいきなり協力的な良い人になるのも、あまり主人公たちとの接点を描いていないのでイマイチ唐突で説得力に欠けていたように思います。

キャラクターとしては、主人公たちに何故かなついて言う事をきくようになる大柄ゾンビのチーズが良かったですね。
ウガウガ言いながら主人公たちのピンチを助ける役目で、「死霊のえじき」のバブ君なみにゾンビキャラが立っていて最高。
途中で合流するベトナム帰りのオジサンも、下ネタOKで何処か哀愁ただようキャラクターが印象深かったです。
と言うか、主人公を完全にくってましたな。

コメディの割にグロリンチョには力が入っていて本格的。
そんなにゾンビの捕食シーンは多くないですが、そこらへんに生首が転がっていたり、胴体がチョン切れていたり、はたまたヘッドショットがキマれば脳漿が飛び散るといった具合。

しかしながら、何というか全体的にパワーが足りない。
やや強引に感じる幕引きは、現実には何も解決しようがないのを誤魔化しているようにしか見えず。
あのラストを「ハッピーボイスキラー」のようだと捉えるか、「ノッキン・オン・ヘヴンズ・ドア」のようだと捉えるのかで評価が分かれる映画じゃないでしょうか。


NETFLIXにて