そこが決して安住の地で無いことは分かっていても、背負った重荷を下ろしたくなる恰好のオアシス…、そこがチェルシー・ホテル。
そこはかとなくココロ静かに瞑想し無常観に浸りながら、ニューヨークの片隅に佇む老朽化した建物は迷える人々を包み込む。
ニューヨークにあるチェルシー・ホテルは数々の作家や芸術家やミュージシャンらが居住してきた実在するホテル、数えきれないほどの逸話が有りすぎるので語り尽くせないが何故ここに滞在するか理由は其々あっても創作者を吸い込む伏魔殿か或いはエデンの園か。
油断すれば魂を吸い取られた抜け殻で魑魅魍魎と成り、そこが天国か地獄かなんて誰にも分かるはずもない。
映画の中でも登場する天使の歌声と賞賛さる伝説的ジャズシンガー〝ジミー・スコット〟の歌う〈Jealous Guy〉は、彼自身の不遇な人生経緯を知れば感慨深く例え知らなくても骨身に染み渡り魂を揺さぶられるだろう。
彼の歌声を聴くだけで価値ある映画かも知れない。
物語性は低いが詩的で哲学的な台詞に幻影的映像が後付けされた様な作りで、チェルシーホテルに滞在する理想と現実に迷える人々のオムニバス映画..★,
Jimmy Scott "jealous guy"
https://youtu.be/co01iVLaRSc
彼が天使の歌声と称される由縁はホルモン異常の疾患によって変声期がないまま成人になったことで、成人男性では出せない独特の少年のような美しい高音が多くの人々を魅力した。
しかしレコード会社と不寛容で排他的な生涯契約を結んでしまい失意と絶望の中、レコーディングの自由を奪われ20年間という長い歳月を世の中に姿を見せることはなかった。
ジミー・スコットの歌声が世間に知られたのは復帰後数年経った1992年のアルバム『All the Way』を発表し、彼は既に67歳だったが世界的大絶賛を受け自分も好きなアルバムのひとつとなった名盤中の名盤。
Jimmy Scott & Joe Pesci Duett "THE NEARNESS OF YOU" from the record "I GO BACK HOME"
https://youtu.be/VwyTikxUW0Y