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砲艦サンパブロの一人旅のレビュー・感想・評価

砲艦サンパブロ(1966年製作の映画)
4.0
ロバート・ワイズ監督作。

1920年代の中国を舞台に、砲艦サンパブロに配属された機関士ホルマンの運命を描いた戦争ドラマ。
1920年代の中国は欧米列強によって沿海部を租借(植民地化)されており、さらに国内では蒋介石率いる国民党や共産党といった軍閥間の対立が激化している。国内・対外関係ともに混沌とした時代だ。そうした中、中国の統一を邪魔する存在と見なされた欧米列強を追い出そうとする動きが中国国内で高まっていく。
本作の主人公ホルマンは中国から見れば間違いなく侵略者。だが、ホルマンは中国・アメリカの緊迫した国際関係などお構いなしに、中国人の置かれた立場に理解を示し、友人の水兵(リチャード・アッテンボロー)が想いを寄せる中国人の娘が自由に生きられるよう手助けするのだ。だが、ここで問題になるのがホルマンがアメリカ海軍に属する米兵であるという事実。中国から、そしてアメリカからも敵と見なされ、ホルマンは徐々に孤立を深めていくのだ。
この時代、誰もが愛国心と自国の利益のために戦っている。自国の利益という大義名分さえあれば、たとえその必要がなくても命令一つで簡単に血が流れてしまう。一度血が流れてしまえば、堰を切ったかのように戦火は広まっていく。だが、ホルマンだけは人種や国籍という枠組みを無視した、人間対人間の純粋な繋がりを大切にしているのだ。
ホルマンを演じたスティーヴ・マックィーンが最高にかっこいい。無口で不愛想、だがさりげない行動で優しさと理解を見せる。特に、困り果てた友人の水兵に何も言わずそっとお金を手渡す場面に惚れ惚れしてしまう。
また、1920年代の中国沿海部を再現した風景が美しい。海に浮かぶ多数の木造船と一隻の鋼鉄製の砲艦の鮮やかな対比、そして妖しげな市街地を行き交う人々のエネルギーが充満しているのだ。
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