青二歳

雪渡りの青二歳のレビュー・感想・評価

雪渡り(1994年製作の映画)
3.7
「堅雪かんこ、凍み雪しんこ」雪の月夜の幻燈会がロマンチックな宮沢賢治のデビュー作。
テレビ東京製作、プロデューサーに出崎晢、監督に四分一節子。この二人が絡むと大抵ロクなことにならないんだが、今作は政治イデオロギーを持ち込まないちゃんとした児童アニメでした、よかった…。つーかそもそもどんなアニメもイデオロギー抜きにしてほしいよ…ヽ(´o`;
某図書館の16ミリフィルム上映で親子連れしかいない中で肩身狭く鑑賞。

狐の紺三郎に“姫ちゃんとリボン”のポコ太(伊藤一寿)、四郎に林原めぐみ、かん子に水谷優子。ナレーションは滝沢久美子。宮沢賢治の優しい童話世界をイキイキと表現するみずみずしいキャストでした。

さて、“雪わたり”といえば多様な解釈があるものですが、今作は素直な解釈で見たいアニメですね。至って原作に忠実で、紺三郎なんてイメージぴったり。原作でも感じられる紺三郎の思わせぶりな間もよく表現されていました。
また三人の兄たちも顔を出さない演出が良かったですね。原作では少し謎めいた存在とも指摘される兄たちを、物々しくならない範囲でうまく表現していたと思います。兄たちは素直に見ると、あくまでこの世界を説明する役割がまずあるんですね。「ははぁ狐もうまくやってるなぁ」「大人の狐に会ったら目をつむるんだぞ」「ほら、鏡餅を持っていくといい」つまり、子供の狐は然程の害がないことを知っていて、狐からのお呼ばれを止めない。ここで童話的な世界がひとまず完成する。一方で、兄たちの台詞は不思議な点もある。かといって大仰な演出をしちゃうと物語の完成度が歪んでしまう。その意味でちょうどいい塩梅でした。
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