つるつるの壺

真夜中の虹のつるつるの壺のネタバレレビュー・内容・結末

真夜中の虹(1988年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

アキ・カウリスマキ初鑑賞。結構好きかも。

炭鉱閉鎖で仕事を失くした男がキャデラックで南を目指す珍道中。

キャデラックを息子に譲った親父がいきなり拳銃自殺する。その演出があまりにも早急であっさりしているので、そんな仕事が無くなったくらいで死なんでもと思うが、後に主人公を通して職探しの大変さを追体験するので、年老いた親父が死を決意したのも説得力が出てくる。

旅の出始めから暴漢に金を奪われ、しかたなく日雇いで働いて日銭を稼ぐのだが、盗みを働かず地道に職探しをしている姿に好感を覚える。この映画はキャラクターが労働するシーンが多く登場し、それらが男女問わずブルーカラーであるというのも個人的に好みである。

職探し全敗の末、自分から金を盗んだ男を見つけて半殺しにしようとしたことでムショ行きというとことん運がないのも不条理劇特有の不憫さと可笑しみがあって良い。

最初はまじめに職探しをしていた主人公がどんどん罪を重ねていくが、それを突き放さず希望にまで辿り着かせる優しさ。まぁ殺したのはカスみたいな奴らなので、そこまで取り返しのつかないという事態でもないわけだが。

オフビートに展開するので、キャラクター達に悲壮感が漂わず、普通に幸せになってほしいと思える。