Jordgubbe

ものすごくうるさくて、ありえないほど近いのJordgubbeのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

これは深いなぁ。
ずっとつらくて苦しいんだけど、たくさんの愛を感じられる作品でした。

まずは、母サンドラ・ブロックがなんと言っても良い。
ママだったら良かった、まで言われても、口を出さず納得できるまで好きなようにさせて、でもちゃんと見守っている。
必死なぐらいの愛が伝わってきた。

ドア越しの愛してるよ、を聞いて声を出さずにうずくまるとこも、何でこうなったのか分からないって夜中に言い争うとこも、2人で色んなブラックさんに会った思い出話をするところも、全部良かった。
『しあわせの隠れ場所』の強い母とはまた違ったけど、母の愛は強いんだなと思った。


そしてマックス・フォン・シドーさん。
最後まで一言も発しなかったのに、強烈なインパクト。
My story is my story. とかも、重みがあったな。
おじいちゃんって分かった時は衝撃だった。
留守電のメッセージを聞く時の表情とかもう…
最後、おばあちゃんが廊下に置いたスーパーの袋をちょっと弾みながら持ちに行くところはちょっと可愛いかった。
最近亡くなられたとニュースになってたけど…本当に残念。


結局、鍵は父が残した冒険の鍵でもなく、他人のものだった。
でも、現実ってそんなものなんだろうなと思う。
誰も明日死ぬなんて思わないから、自分が死んだ時のために子どもに謎解きを用意なんてしていないはず。


そして何より、オスカー。
6番目の電話に出なかった罪悪感と喪失感と理不尽さに押し潰されそうになってるまだ少年の姿が痛々しくて、見るの辛い部分もあった。
本当は悪いのは母ではないって分かってるのに、感情を何にぶつけていいのか分からず、母も傷つけて自分も傷ついて。
ひたすらつらい。
でも、間借り人のおじいちゃんや鍵の真の持ち主にそれまで誰にも話してない話をすることで少しずつ肩の荷が下りていく。

冒頭から流れるトムハンクスがビルから落ちる映像を、自分なりに消化してノートにおさめてるのも良かった。



今作は「痛みの共有」もポイントだったのかな。オスカーの言う通り、大勢の人が大切な何かを失ってて、1人では抱えきれないけれど、他の人と共有してなんとか踏ん張れる。
オスカーが色んなブラックさんに痛みを共有してもらったのはもちろん、ブラックさんたちもオスカーに自分の痛みを共有して救われた部分があったんじゃないかと。
特に最後の青の花瓶の持ち主とか。
間借り人もそうだと思う。


9.11をはじめ、何人が亡くなった、という数字は他の人の目から見たら壁に貼られたたくさんのビラが多いなぁぐらいにしか映らないかもしれないけど、例えそれが1人でもその後ろにはたくさんの、その人を想う人たちの苦しみや悲しみがあるんだと気付かされた。


トム・ハンクスがもっと前面に出てる映画かと思ったら、実際はほんの少し。
でも抜群の良きパパというのが伝わってくるし、電話の音声だけで泣かされるかと思った。

オスカーが気持ちを沈めるために持ち歩いてるタンバリンは、もしかしたら電話の呼び出し音と重なるから…!?なんて思ったり。深読みしすぎかな。


涙なしには見れない。
静かな涙が何回も流れる。
でも最後のオスカーのブランコ上での笑顔に救われたし、温かい気持ちになった。
もっと家族を大切にしたいと思った。
Jordgubbe

Jordgubbe