つかれぐま

がんばれ!ベアーズのつかれぐまのレビュー・感想・評価

がんばれ!ベアーズ(1976年製作の映画)
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【こどもの日に】
少年野球チームの話ではあるが、決して勝利の喜びや、チームワーク・友情の大切さといった、ありふれたテーマのための作品ではない。むしろそういう「少年ジャンプ原理主義」が苦手な人にこそ響くのでは。

では何が本作の魅力か。
それはラストシーンに集約される。あの楽しそうなバカ騒ぎは、我々大人が言語化してはいけない「子供の領域」なのだろうが、あえて無粋を承知で言えば「個を大切する」ことが(少なくとも子供にとっては)一番素晴らしいというメッセージかと。愛すべきクソガキたちを、温かく見守っている星条旗🇺🇸という構図がいい。色んな映画に星条旗は出てくるが、旗を擬人化したような、こんなに優しい使われ方はないのでは。

大人視点で見れば、この話はアメリカの縮図だ。少年野球は子供が主役というのは建前で、有名企業にスポンサードされ、コーチは金持ちに雇われ、そのコーチは勝利至上主義に走る。実は大人の手のひらにいる子供たち。カネが物を言う資本主義の構造が、こんな小さく無垢なはずの世界でも顔を出す。良くも悪くもアメリカ。

アマンダとケリーがベアーズに入った本当の動機。それが観客にだけわかるように演出されている。そこに気付かないバターメイカー。この辺の大人と子供のずれがとても面白く、少しだけ切ない。少女がだらしない擬似パパの為に肩を貸す。これ、テータム・オニールの前作『ペーパームーン』と同じ構造だね。