ししまる

ブラックホーク・ダウンのししまるのレビュー・感想・評価

ブラックホーク・ダウン(2001年製作の映画)
3.5
1993年10月。民族紛争が激化するソマリアで監視活動を行っていた米軍は武装勢力アイディード将軍の側近2人を捕らえるため、レンジャー部隊とデルタフォース、ナイトストーカーズなどの精鋭100名を首都モガディシオに出動。任務中、武装勢力の攻撃で1機のヘリ、ブラックホークが被弾して市街地に墜落する。
臨場感にあふれた再現性の高いミリタリーアクション。登場人物多数でみんなミリタリーカットだから判別が難しく、大半が戦闘シーンなのでちょっと分かりにくいが、壮絶な戦闘の現実を知る。勝者もいなければ英雄もいない。
✅メモ
実際の「モガディシュの戦闘」を描いたマーク・ボウデンによるノンフィクション小説「ブラックホーク・ダウン アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録」が原作。戦闘の激しかった地域の名から「ブラック・シーの戦い」とも呼ばれる。
作戦はクリントン政権の米国が単独で実施、30分程度で終わらせる予定だったが15時間を費やし、2機のヘリを失い、米兵19人が死亡。他に国連軍であるマレーシア、パキスタン軍兵士計2人が死亡した。ソマリア民兵・市民は200人以上が死亡(米政府発表は1000人以上)。ソマリアの住民が米兵の遺体を裸にして引きずり回す映像が米国内に衝撃を与え、撤退論が高まり、クリントン大統領は撤退を決定した。
本作はモガディシュ政情不安のため、地形の似たモロッコで撮影された。作戦に従事して帰還したレンジャー隊員アーロン・A・ウィーバーが本作終盤、デルタ隊員にコーヒーを手渡す役でカメオ出演。同氏は2004年のイラクのファルージャでヘリ移動中に撃墜されて死亡した。
墜落したのは米軍の汎用ヘリコプターUH-60ブラックホークの強襲型であるMH-60Lブラックホーク。シコルスキー・エアクラフト社製で名称はイリノイ州居留のインディアン・ソーク族の酋長の名に由来する。本作では米軍の協力により実際の機体が撮影に使われた。
UH-60ファミリーは多くの国へと輸出され、日本では救難目的に独自改良した救難ヘリを三菱重工業がライセンス生産し、自衛隊に配備されている。
ソマリアは1991年のバレ政権崩壊以降、無政府状態が続き軍閥が各地で群雄割拠する内乱状態にあったが、2012年にモハムッド大統領率いる統一政府が成立。22年に大統領は再選された。
しかし、イスラム過激派組織「アル・シャバーブ」はソマリア中部、南部の村落部で広大な支配地域を維持し、首都モガディシュでも活動。17年にはモガディシュのトラック爆弾爆発事件で数百人が亡くなる過去最悪の被害が出た。22年10月にはモガディシュの教育省前で自動車爆弾事件が起き約100人が死亡。22年8月及び2023年6月には同じくモガディシュで多数の死者を伴うホテル襲撃事件が発生し、いずれもアル・シャバーブから犯行声明が出された。現在も、モガディシュを中心として頻繁に即席爆発装置を利用したテロ事件が発生し、ソマリア全土で身代金を目的とした外国人及びNGO活動家の誘拐事件が多発している。
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