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きわめてよいふうけいのnoelleのレビュー・感想・評価

きわめてよいふうけい(2004年製作の映画)
4.5
一昨日見た「カメラになった男」と同様のフッテージが多かったが、こちらはホンマタカシ作品(映像は初めて見た)ということで、中平卓馬を一定の距離を挟んで撮った映像作品という感じで、彼のいる/いた風景と共にその姿をより淡々と映していた。日記を読み上げるくぐもった声、自転車に乗りながら、そして夕暮れの海に足を浸しながらカメラを構える姿がとても良かった。
昨夜「なぜ、植物図鑑か」を読み進めていたら、中盤の一節で世界と同一になろうとするシーシュポスの徒労について書かれていた。別の箇所でもカミュの引用があり、カミュと中平卓馬のスタンスは自分の中でかなりリンクした。世界は到底個人のまなざすワンフレームで捉えきれないもの、そうと知りつつ果敢に、より世界に近づき、より「全的に」撮ろうとすることを全く止めないあの姿は、徒労と知りつつ永遠の石運びの中に生を見出すシーシュポスと重なる。世界を、他者を知ることができないと知りながら知ろうとすることをやめることができない、それが人間だとカミュは認めていたけど、まさにその言わんとするところをあの滑らかな動きでカメラを構える姿に見た思いがした。
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