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なみのおとのnoelleのレビュー・感想・評価

なみのおと(2011年製作の映画)
5.0
大学の時に抜粋で見ていたけど全編ようやく見れた。早稲田の映研さん、ありがとうございます。。
これをドキュメンタリーと言い切ってよいのか、編集の繋ぎ目を考える暇もないほどスムーズな語り口。フィクション/ドキュメンタリーを超えて濱口映画としか言えない、綿密なメソッドによって構築された時空間。向かい合う一対の人と人。ダイレクトな映像ではなく、語りによって紡がれる震災の記憶。例の真正面のショットや濱口さんが急に話す2人の間に座っていたり、カメラに向けられるさまざまな表情に驚かされながら、いつの間にかその場に自分も巻き込まれて共に話を聞いている感覚。この実験的な3部作を経たのちのハッピーアワー等々であるということに目でもって納得した。
津波で川に流された夫婦の話は壮絶な内容だったこともあるけど、それを語る底抜けに明るい奥さんがすごく印象的だった。これまでのことを忘れず、これからをどうするかというスタンスに、見ていて自分が勇気をもらった。震災当時中学生で、被災地の映像をただ眺めるだけで何もできないと感じた自分にも、今ならできることはある。
『悪は存在しない』では対人コミュニケーションの残酷な側面も見せられたけどそれも優しさで、濱口さんの根っこにある真摯な人柄を改めて確認した。
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