Jordgubbe

善き人のためのソナタのJordgubbeのネタバレレビュー・内容・結末

善き人のためのソナタ(2006年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

とても良い、すごく良いとずっと聞いていて、でもどの動画配信サイトにもなくて、どうしてもどうしても観たくなって1億年ぶりぐらいにTSUTAYA行って借りてきて観ました。(Tポイントカード一昨年で期限切れてた笑)

ブルーレイじゃないDVDも多分数年ぶりに観た。


ドレイマンが作中で一度だけ弾く「善き人のためのソナタ」が言葉にできないほど刺さった。
悲壮感が漂うメロディーの中にも、力強さ、私は負けないという叫びのような凛とした雰囲気もあり、でも気持ちのやり場に困るような儚さや脆さ、迷いや不安もあったりで、とても良い。
善き人のためのソナタの楽譜?をドレイマンに贈ったイェルスカ役の俳優さんも、数シーンしか出てないのに強烈な印象。


ドレイマンが、始めは本当にロボットかな?と思うほど顔に色がなくて、暗い目をしてたのに、善き人のソナタを聴いて一筋の涙を流した後は、本当に少しずつ人間になっていくのが目に見えて分かって不思議だった。演技で人はあそこまで変われるのかな。
表情もほとんど変わらず、意思疎通のための必要最低限しか話さないのに。


この映画のテーマこれです!って一言で言うのは難しい。
自由(特に表現の自由)、愛、社会主義、色々な要素が深く絡まってた。


終わり方も静かで、とても良い。
ドレイマンがあそこで声をかけて、
「あの時はありがとう。助かりました」
と言っても良かったけど、でもそれでは伝え切れない。
東西統一から一度も書いていなかったドレイマンが、初めて書いたもの。
そして、ヴィースラーが「私のための本だ」と。
見てる時は何で会いに行かないんだと思ったけど、ヴィースラーが守ってくれた書くということで伝えることこそがドレイマンができる最大限のお礼の仕方だったんだろうな。

ドレイマンが記念館で自分に関する資料に目を通している時、一番下のファイルにあったクリスタの証言文。
それは、クリスタが暗号名まで持つシュタージの密告者だったという意味らしい。
(ネット上での誰かのレビューを見て知った。)
密告者は20万人もいたのだから、そりゃ身近にいてもおかしくないけど、ちょっと戦慄を覚えた。
そういう時代だったからクリスタだけを責めることはできないけど、もしかしたらそれ目的で近づいたとか…?

でもその彼女が、最愛の男の人を守ろうとしてた…?
もしかしたら、ドレイマンに心を動かされたのはヴィースラーだけではなかったかもしれない。



主人公の大尉を演じた俳優さんが、実生活でも東ドイツ出身で、結婚した妻に監視・密告されていたのではないかと言われているらしい。
それを今作を見終わった後に知り、その時の気持ちを知っているからこそ出せる雰囲気というかがあったのかもしれないと思った。
監視される側ではなくてする側ではあるけど。
病気のため、早くに亡くなられたそうでとても残念。
すばらしいHGW XX7でした。

ヴィースラーの吹き替えが、ナルトの再不斬とかポケモンのオーキド博士をされた方と知り、どんな声なのか気になりすぎる。
今回は字幕で見たけど次は吹き替えでちょっと観たくなってしまう。。

作品の中はつらいのに、なぜか見終わったら心が温かくなった。
じわじわと広がっていく感じ。
また一つ、心に長く深く残る良い作品に出会えた。


そして、見てる最中から自分があまりにも世界史を知らないことが恥ずかしくなった。(日本史選択だったけど)
貧しかったのは東側だっけ?西側?
ベルリンの壁が崩壊したのってそんなに最近の話なの??(たった数十年前、親が普通に大人として生きてる時代…)と…
生まれてない時の話とは言え、知らなさすぎる。
そういう背景を知っていたら、また違った感想や発見があるかもしれないのに。

東ドイツの歴史を勉強するところから始めようと思った。
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