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おもひでぽろぽろのlilillのネタバレレビュー・内容・結末

おもひでぽろぽろ(1991年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

紙袋でお尻隠すミニスカ


人間描写がリアルすぎて逆にエンタメ作品としては、かなり理解や共感が難しい作品になってるなと思いました。
たとえば、子供の頃の夏休みの田舎帰りに憧れて、いま仕事の休暇をとって田舎で過ごすこと、
子供にとってナイーブな初潮を蝶の生育における蛹の期間と捉え、いま現在も大人になるという点で蛹期間へ移行するべきかという悩み、27歳で貰い手のない現状から、小学生時代の初恋の懐古。
人間ってのはこういう支離滅裂な要素が、自分のコントロールできない範囲で根強く残って大人になった時の人格や行動に起因するものなのですが、それをこの作品はリアルに描き過ぎていて(とても凄いことなんだけど)、作品として大衆が楽しめるものではなくなってる。

ジブリ作品を見てよく感じることは、映像の3要素(自分で勝手に考えた)
・舞台設定
・作品のメッセージ
・映像表現技法

のうち、舞台設定と作品メッセージの良い効果としての矛盾が、特徴であるということ。
例えば、魔女の宅急便のように、現実ではあり得ない(つまり共感性の低い舞台設定)のなかで、メッセージは共感性の高いものという、この矛盾こそがジブリたる所以だと勝手に解釈しています。

それが本作は、舞台設定も27歳独身OL、作品メッセージも「大人になるということ、結婚などの人生のキャリア設計」みたいな、あまりにもリアルかつニッチな2つの要素で、逆に共感できる層が限られていると感じた。つまり、上記の「良い矛盾」が発生せずに感情移入しづらくなっている。
だから、20代後半独身OLの人とか、三姉妹の三女とかがみたら共感性高くて良いなーってなると思うけどそれ以外は、あまりハマらないんだろうなという印象。

ただ、3要素のうち・映像表現技法という点においては、ユニークで良い意味でジブリっぽくないシーンが多く見受けられた。挿入歌や引用作品などもレトロで好みだし、ジブリが普段使用しない技法を使ったりする点は、かなり面白かった。

総じて、多分「ジブリにいる身でジブリっぽくない作品を作る」っていう高畑さんの尖りを感じることができる作品でした。
高畑さんもここらへんの、「ジブリからのずらし」を意図的にやってるんだろうな。

そうやって多くの学びや考えを引き出してくれるという点では、良作だけど単純に映画というエンタメとして面白いかというと、むずかしぃ^_^
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