evergla00

墨攻のevergla00のレビュー・感想・評価

墨攻(2006年製作の映画)
3.5
【非攻と兼愛】

お恥ずかしながら、墨家というキリスト教にも似たような博愛主義を唱えた集団が、紀元前の中国にあったとは初めて知りました。興味深いのは領土拡大のための侵攻には否定的だが、守備のためなら戦闘も致し方ないという点。

10万もの大軍率いる趙の攻撃対象となった梁は、墨家に援軍を求める。やって来たのは革離という一人の墨者。降伏しても身の安全は保証されないのだから、名誉のために戦えと諭す。

一切の見返りを求めず、梁城の守備に徹する革離。無駄な殺傷はさせない、お互いのために攻撃を諦めさせる。とは言え犠牲者は出る。墨子の教えを守りながらも、果たしてこれで良いのだろうかと悩む姿はまるで哲学者です。

決して驕らない革離を慕う人々が増える一方、今度はそれを妬む者が出てくる。兼愛など到底無理なのか。愛する対象は絞るべきなのか。

何でそうなる?という流れもありますし、一部あからさまなCGですが、スケールの大きい作品で釘付けになりました。

全ては己の信念を貫き通した結果であり、受け止めなければならない…にしても、結局ズル賢い奴だけが生き残れるような終わり方があんまりかなぁ…。もう少し救いが欲しい所ですが、人類の歴史においては当たらずといえども遠からずでしょうか…。

***

うし将軍
ちまた将軍
じゃなくて音読みでした。
evergla00

evergla00