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散歩する霊柩車のotomisanのレビュー・感想・評価

散歩する霊柩車(1964年製作の映画)
3.9
 なるほど、生業から外れ「生き仏」を載せて霊柩車が散歩とは。などと笑っていてはいけない。2日で死者5人の大惨事なので。もっとも最初の一人は勝手に死んでくれたのだが。
 もともと、ますみ狸に乗せられて強請りに手を染めた西村キツネは、さえない寝取られ男なのだが、余程いい駒で、強請りの黒幕をKOしてからは一転、魔性を帯び始める。行き掛かりながらますみ・清と喰って、ついでにますみの燕も取って食うか、と思いきや本人が自爆してしまった。やはり悪事は引き合わない。
 一生分のスリルとサスペンスを1日で使い果たすと人は死ぬしかないのだろうか? 西村キツネ、仏二人との逃亡行にはお迎えの影が付いて回る。挙句にますみの若い燕(同伴中)に笑って送られ、元のさえない寝取られ男に戻る。これのどこが面白いか?
 実は面白くない。ただ、軋んだ夫婦(なれ初めを知りたい)のキツネたぬき感や強請りの黒幕とカモのモルグでの同衾やら、ますみの燕と西村キツネの月とスッポンの観が妙な訳で、気が付けば、笑っちゃうような気がするのである。
 左様、実のところ観衆大多数の歯噛みすべき事に、唯一配当を得たのは、彼の燕君でひと晩の内にPorscheとイケてるバランスウエィト(それ以上か。相棒の素質あり)を得てしまった。その時の西村キツネの大苦闘たるや... ここに恵まれてワルく生きられる者とその他の格差が如実になるのだ。
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