Laura

しとやかな獣のLauraのレビュー・感想・評価

しとやかな獣(1962年製作の映画)
3.5
団地ドラマ×ピカレスク。アナクロと承知でこの取り合わせには『パラサイト 半地下の家族』を思い出さずにはいられない。ここで主人公家族を一つにしているのは「もう二度と終戦直後の貧乏暮らしには戻りたくない」という気持ちだ。『風船』と言い、川島はこういう普通の顔をして戦後を生きていたであろう日本人の抱えた傷をさりげなく見せてくるのでドキッとする(本作の脚本は新藤兼人だが)。俯瞰、仰瞰、窃視。密室劇に動きを持たせるため、あらゆる角度にカメラは動く。一切の無駄を省いた効率的な語りを目指した結果、一部のカットは抽象、象徴のレベルにまで達しようとしている。能楽の囃子を合わせる演出は実験的だが、やや嫌味に感じてしまった。
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